カルチャー
2016年4月15日
日本の組織に欠けている「ダイバーシティ」って何?
[連載] 自分の半径5mから日本の未来と働き方を考えてみよう【6】
本当は身近なところから始められるダイバーシティ
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ダイバーシティを活用して組織を強くする


島澤 組織を強くするには、労働の流動化などでダイバーシティを生み出すことが不可欠ですが、ライフネット生命の人材登用ではどのような取り組みを行っていますか?

出口 ライフネット生命では2010年から定期採用を始めていますが、まずは社内でどういう人材が必要なのかを徹底して議論し、その結果、「人とは違うことを考え、それをマネタイズできる人材、すなわち独創的なアイデアを数字、ファクト、ロジックで考えてビジネスプランに落とし込める人材」がベンチャー企業には必要不可欠であることを確認し、「新卒の定義:30歳未満のみ」「採用方法:難しいテーマを与え、字数無制限の論文を提出」という募集要項を定めました。
 30歳未満としたのは、グローバル基準そのものですが、大学を出てからNPOなどでいろいろなことを学んだ人たちと一緒に働きたいという思いも込められています。

島澤 30歳未満だと、人材の幅も広がりますね。

出口 実際、変わった経歴のスタッフがたくさん入ってきています。例えば、大学院で化学を学び、パリ大学に留学して、フランスの化学企業とライフネット生命を天秤にかけて入社した人間や、高校を中退して働いたあと、大学に入り直してボクシングで全日本学生選手権4位に入った人間など、興味が尽きません。

島澤 社内に新たなインパクトを巻き起こしてくれそうな方ですね。こういった人たちが新卒の壁に阻まれずに入社できる環境が、これからの日本企業には必要なのでしょうね。

出口 ダイバーシティは、身近なところから始めることができます。例えば、職場の会議のメンバーがいつも全員男性ばかりだったら、違う部門の女性を1人か2人加えてみる、そうすると女性目線の新たなアイデアや意見が出てくるかもしれません。また、営業の会議に事務部門のスタッフを参加させることで、何か違った方向性が生まれてくるかもしれません。ライフネット生命ではいつもそうしたラン&テストを行っています。

(了)





自分の半径5mから日本の未来と働き方を考えてみよう会議
出口治明・島澤諭 著



出口治明(でぐち・はるあき)
1948年、三重県生まれ。京都大学法学部卒業。1972年、日本生命保険相互会社入社。日本興業銀行(出向)、生命保険協会財務企画専門委員会委員長(初代)、ロンドン事務所長、国際業務部長などを経て、2006年に日本生命保険相互会社を退職。東京大学総長室アドバイザー、早稲田大学大学院講師などを経て、現在、ライフネット生命保険株式会社・代表取締役会長兼CEO。

島澤諭(しまさわ・まなぶ)
東京大学経済学部卒業。1994年、経済企画庁(現内閣府)入庁。2001年内閣府退官。秋田大学教育文化学部准教授等を経て、2015年4月より中部圏社会経済研究所経済分析・応用チームリーダー。この間、内閣府経済社会総合研究所客員研究員、財務省財務総合政策研究所客員研究員等を兼任。専門は世代間格差の政治経済学。
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