カルチャー
2016年4月1日
国会議員の数はむしろ増やしたほうがいい! ただし...
[連載] 自分の半径5mから日本の未来と働き方を考えてみよう【4】
「ゲス不倫」議員などではない志の高い議員を増やす秘策!
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少子化、老老介護、孤独死、待機児童問題など、数多くの難題を抱え「課題先進国」となってしまった日本。こうした混迷の時代でも、自分の半径5mの世界から変えていくことが結局は早く世界を変えることにつながる。日本の未来と、今後の私たちの働き方について、出口治明 氏と島澤諭 氏に語っていただく好評連載4回目!(出典:『自分の半径5mから日本の未来と働き方を考えてみよう会議』)


日本とドイツ、どこで道は分かれたか


出口 日本は1000兆円を超える公的借金を抱えており、しかも現在進行形で増え続けています。主要国の公的債務残高の推移を見ても、他の先進国はほぼ横ばいですが、日本だけが右肩上がりです。ギリシャやアルゼンチンに比べればデフォルト(借金の利息や元本の返済ができなくなること)の可能性は低いですが、だからといって借金が膨れ上がる今の構造を放っておくわけにはいきません。未来の子どもたちからお金を借りているわけですから、厳しい現実から目をそらさず、本気で取り組むべきでしょう。
 他の国と比較すると、例えばドイツは半世紀近くも東西に分断され、しかも東ドイツはソ連に搾取されるという日本とは対照的な道を歩みましたが、今は日本よりも経済・財政運営に係わるほとんどの指数がはるかにしっかりしています。2015年度予算では1969年以来となる新規国債発行ゼロを達成し、国の歳入をすべて税収でまかなっています。

島澤 日本は国の歳出が100兆円に届く勢いですが、これは元々、リーマンショックをきっかけに101兆円となったことに端を発します。リーマンショックは戻りましたが、それから歳出は5兆円しか減っていません。その一方、税収は50兆円台後半しかなく、歳入の約4割を公的借金でカバーしています。新規国債発行額が前年より減ったといってもまだまだ新しい借金が増え続けているわけですから、健全な財政運営をするドイツとはあまりに対照的です。

出口 ドイツが国債の発行なしでも国を運営できるのは、本気で社会の構造改革や財政再建に取り組んできたからです。ではなぜ本気で改革に取り組めたかというと、首相の在任期間が長いからです。ドイツは東西に分裂した1949年以降、首相経験者は7人しかいません(旧東ドイツを除く)。平均在任期間は1人あたり9.4年で、現在のメルケル首相はすでに10年以上も首相職を務めています。
 一方の日本は東久邇宮内閣以降、現在の安倍政権まで33人が首相に就任しており、平均在任期間は2.15年です。
 これが何を意味するかというと、国債は基本的には10年債です。日本の首相は2年ぐらいで入れ替わるわけですから、「そのうち優秀な若者が出てきて何とか借金を返してくれるだろう」と無責任になってしまうのです。これは王政よりもひどい状況です。王様なら自分の子どもが後を継ぎますから、無責任なことはそう簡単にできない。会社もそうですが、統治期間が短すぎると皆問題が先送りになる。でも10年務めるとなると自分で借金を返さなければならなくなるので、安易な借金ができなくなるのです。






自分の半径5mから日本の未来と働き方を考えてみよう会議
出口治明・島澤諭 著



出口治明(でぐち・はるあき)
1948年、三重県生まれ。京都大学法学部卒業。1972年、日本生命保険相互会社入社。日本興業銀行(出向)、生命保険協会財務企画専門委員会委員長(初代)、ロンドン事務所長、国際業務部長などを経て、2006年に日本生命保険相互会社を退職。東京大学総長室アドバイザー、早稲田大学大学院講師などを経て、現在、ライフネット生命保険株式会社・代表取締役会長兼CEO。

島澤諭(しまさわ・まなぶ)
東京大学経済学部卒業。1994年、経済企画庁(現内閣府)入庁。2001年内閣府退官。秋田大学教育文化学部准教授等を経て、2015年4月より中部圏社会経済研究所経済分析・応用チームリーダー。この間、内閣府経済社会総合研究所客員研究員、財務省財務総合政策研究所客員研究員等を兼任。専門は世代間格差の政治経済学。
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