カルチャー
2016年4月20日
「サラダ油」は体に毒ってホント? ──認知症、アトピー、うつなどの原因にも
文・山嶋哲盛(脳科学専門医)
サラダ油に毒素が入っているというと、みなさん、「そんな、まさか!」と思うのではないでしょうか。
サラダ油の主成分であるリノール酸は200度前後に加熱されると、「ヒドロキシノネナール」(以下、略して「ヒドロ」と呼ぶ)という毒性が発生します。このことは、ミネソタ大学の栄養学の研究者がすでに発表しています。また、私が追試(同じ実験をほかの研究者が繰り返し行うこと)した結果でも、同様のデータが出ました。
「ヒドロ」が体内に入ると、細胞膜(中でも主主成分の「リン脂質」)を酸化させ、脳内の神経細胞の死をもたらし、アルツハイマー病を始めとした、さまざまな病気の原因になるのです。
では、熱を加えるのがダメなら、「加熱しないで使えば大丈夫なのでは?」と思うかもしれません。ところがサラダ油には、工場出荷の段階で多かれ少なかれ「ヒドロ」が発生しているのです。
化学溶剤を使った工程は、まるで工業製品!?
どこのスーパーに行っても必ず置いてあるほどポピュラーな「サラダ油」。でも、なぜ「サラダ」なのか? その原料は? 知っている方は少ないのではないでしょうか。
「サラダ油」の名前は、サラダ用の食用油として開発されたことから由来しています。 生でも食べられるほど精製度の高い油で、日本農林規格(JAS規格)では「0℃の環境で5.5時間放置しても濁らないこと」をサラダ油の条件としています。
どんな油にも天然由来のロウが含まれていて、低温では白っぽく凝固していくものですが、サラダ油が0℃でも濁らないのは、精製度が高いからです。
「精製度が高い」と言うと聞こえはいいですが、サラダ油に関して言えば、これが「からだに悪い」ことの要因になっているのです。
サラダ油の製造工程を見てみると、まず工場で原材料(紅花の種、ぶどうの種、大豆、ひまわりの種など)を機械で粉砕してフレーク状にします。そこに「ヘキサン」という化学溶剤を加え、材料に含まれる油分を溶かし出します。ヘキサンは石油から作られ、自動車のブレーキやパーツのクリーナーとしても売られている化学溶剤です。
このヘキサンで抽出した油を、濁りやニオイのない、きれいな油にするために、何度も高温処理を施し、溶剤自体を揮発させることで、精製度の高いサラダ油ができあがります。
精製する過程で高温処理を行っているのだから、製品化された段階で、多かれ少なかれ、「ヒドロが発生している」というわけです。
サラダ油のうたい文句の「油っこくない」「さらっと軽い」は、油の原材料の風味を高温処理で殺している結果ともいえます。そのために、味やにおいにクセがなく、どんな食材や調理にも応用がききやすいという面があるのです。
原材料については、サフラワー(紅花)、ぶどう(グレープシード)、大豆、ひまわり、とうもろこし、綿実、菜種、ごま、米の9種類のいずれかが使われます。つまり、紅花油、グレープシードオイル、コーン油、菜種油などの原材料名で呼ばれている油も、「サラダ油」の仲間というわけです。
一方で、サラダ油の中でも「ごま」と「米」を使ったものは、製造工程や含有成分に問題はなく、からだにいい油といえます。ただし、ごま油、米油ともに、後述するように選び方にポイントがあるので、ご注意ください。
「サラダ油」がアトピー性皮膚炎、糖尿病などの原因に
話を「ヒドロ」に戻しましょう。「ヒドロ」を含むサラダ油やその加工食品を摂ると、細胞膜はもろくなり、「必要な栄養素を細胞内に取り込めなくなる」「ウイルスや細菌が侵入しやすくなる」可能性が高まります。
たとえば、アレルギーの原因であるアレルゲンが細胞内に侵入すると、アトピー性皮膚炎や花粉症、ぜん息、アレルギー性鼻炎など、さまざまなアレルギー症状を引き起こします。
また、細胞内に栄養を取り込めないために起きる病気のひとつに、糖尿病があります。もろくなった細胞膜はインスリン(膵臓から分泌されたホルモン)をキャッチできず、その結果、血液中に糖が溜まり、糖尿病を発症することにつながります(インスリンには、ブドウ糖を細胞内に取り込む働きがあるため)。
このほか、うつ病の原因については、脳内の神経伝達機能の異常がかかわっているらしいということが近年の研究でわかってきました。これは、脳内の神経細胞を殺す「ヒドロ」が神経伝達の異常にかかわっており、大本をたどっていくと、サラダ油が関与しているのではないかというのが、私の見解です。
山嶋 哲盛(やましまてつもり)
医学博士。脳科学専門医。金沢市生まれ。1975年、金沢大学医学部卒業、1979年、金沢大学大学院医学系研究科修了。その後、金沢大学医学部付属病院医局長、金沢大学医学部助教授などを歴任。現在、金沢大学大学院医薬保健学総合研究科・再生脳外科科長をつとめ、また金沢大学病院、南ヶ丘病院にて、「高次脳機能障害」専門外来で診療を行う。「リノール酸を多く含むサラダ油の摂取が認知症などさまざまな病気を引き起こす」と警鐘を鳴らす著書、『そのサラダ油が脳と体を壊してる』『認知症が嫌なら油を変えよう!』(以上、ダイナミックセラーズ出版)、『「サラダ油」をやめれば脳がボケずに血管も詰まらない!』(ワニブックス)が話題となる。また、診療にも定評があり、独自の神経心理テストとMRIやPETスキャンを駆使して、認知症状が初発する数年も前にアルツハイマー病を早期診断し、予防的治療を行うことでも有名で多数の患者が外来を訪れる。
医学博士。脳科学専門医。金沢市生まれ。1975年、金沢大学医学部卒業、1979年、金沢大学大学院医学系研究科修了。その後、金沢大学医学部付属病院医局長、金沢大学医学部助教授などを歴任。現在、金沢大学大学院医薬保健学総合研究科・再生脳外科科長をつとめ、また金沢大学病院、南ヶ丘病院にて、「高次脳機能障害」専門外来で診療を行う。「リノール酸を多く含むサラダ油の摂取が認知症などさまざまな病気を引き起こす」と警鐘を鳴らす著書、『そのサラダ油が脳と体を壊してる』『認知症が嫌なら油を変えよう!』(以上、ダイナミックセラーズ出版)、『「サラダ油」をやめれば脳がボケずに血管も詰まらない!』(ワニブックス)が話題となる。また、診療にも定評があり、独自の神経心理テストとMRIやPETスキャンを駆使して、認知症状が初発する数年も前にアルツハイマー病を早期診断し、予防的治療を行うことでも有名で多数の患者が外来を訪れる。