カルチャー
2016年4月20日
「サラダ油」は体に毒ってホント? ──認知症、アトピー、うつなどの原因にも
文・山嶋哲盛(脳科学専門医)
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「隠れサラダ油」使用商品に要注意!


 ここまでのお話で、サラダ油の危険性はおわかりいただけたのではないでしょうか。しかし、今あるサラダ油を捨てればいい――というだけならば、話は早いのですが、そんなに簡単な話ではありません。一見、「サラダ油なんて無関係」と思われる食品にも、サラダ油が使われているのです。

 たとえば、コーヒーに入れる「コーヒーフレッシュ」。お手元にあるなら、原材料表示を見てみてください。「植物油脂」の名称があるはずです。「植物油脂」は、主にサラダ油を原料としていて、植物から採られる油脂分を食用に精製したものの総称です。
 平たくいえば、コーヒーにコーヒーフレッシュというのは、コーヒーにサラダ油を入れているようなものです。

 ほかに、「ホイップクリーム」もコーヒーフレッシュと同じで、植物油脂に添加物を加えて作ったものです。乳脂肪のみを原料にし、一切、添加物を加えていないものは箱に「クリーム(乳製品)」と明記してあります。
 手作りケーキをホイップクリームできれいにデコレートするのは、ケーキにサラダ油を塗りたくっているようなものです。

 さらに、マーガリンやショートニング(植物油脂に窒素ガスや炭酸ガスを混入して作ったオイル)とそれらを原材料にした食品も含めれば、市販品の多くは「サラダ油」だらけです。洋食や洋菓子のみならず、大福餅、どら焼き、あんみつ...個別包装のものなら原材料表示を必ず見てください。あんの照りやなめらかさを出すためにマーガリンや植物油脂を使用している製品もあります。

 誤解しないでほしいのですが、私は「サラダ油をやめて、ノンオイル生活に変えればいい」と言いたいわけではありません。健康を回復するには、油は欠かせない存在です。
 脳を形成している成分の約60%は脂肪、すなわち脂肪酸です。からだを作っている細胞や脳を作っている神経細胞の健康は、摂取する油の質で100%決まってしまうといえるのです。ですから、単純に量を減らすのではなく(もちろん摂りすぎはよくありませんが)、油の質をよくすることに、もっと目を向けてほしいのです。

 では、サラダ油を避けてどのような「油」を選べばいいのでしょうか。

 私が提唱する脳とからだにいい「健康油」は、ごま油、オリーブ油、米油、えごま油、亜麻仁油の5種類です。順番に見ていきましょう。

肝機能を高めてくれる「ごま油」


 リノール酸を多く含む「サラダ油」の中でも、例外的に「健康油」といえるのが、ごま油と米油です。
 ごま油は熱しても酸化しにくく、しかも抗酸化作用のあるセサミンという成分は、加熱するとその量が増えるという特徴があります。
 ごま油には、焙煎してから抽出するのと生のまま圧搾するという2つの作り方があります。焙煎ごま油は茶色でごま独特の香りがあり、生搾りは透明であまり香りはありません。

 リノール酸を多く含むごま油からは、加熱によって「ヒドロ」が発生してしまいます。いくら酸化しにくいとはいえ、焙煎したものよりは透明な生搾りのほうが安心です。
 摂取するメリットとしては、肝機能を高める効果があげられます。肝臓は栄養素を貯蔵したり、アルコールや薬などの有害物質を分解したりと、とても働き者です。ごま油に含まれる「リグナン」という成分は、肝臓を攻撃する活性酸素を除去し、肝臓の細胞が傷つくのを防ぎ、肝機能を高めてくれます。



そのサラダ油があなたを殺す
アレルギー、うつ、認知症を防ぐ! 健康油の使い方
山嶋哲盛 著/上村 泰子(料理レシピ) 監修



山嶋 哲盛(やましまてつもり)
医学博士。脳科学専門医。金沢市生まれ。1975年、金沢大学医学部卒業、1979年、金沢大学大学院医学系研究科修了。その後、金沢大学医学部付属病院医局長、金沢大学医学部助教授などを歴任。現在、金沢大学大学院医薬保健学総合研究科・再生脳外科科長をつとめ、また金沢大学病院、南ヶ丘病院にて、「高次脳機能障害」専門外来で診療を行う。「リノール酸を多く含むサラダ油の摂取が認知症などさまざまな病気を引き起こす」と警鐘を鳴らす著書、『そのサラダ油が脳と体を壊してる』『認知症が嫌なら油を変えよう!』(以上、ダイナミックセラーズ出版)、『「サラダ油」をやめれば脳がボケずに血管も詰まらない!』(ワニブックス)が話題となる。また、診療にも定評があり、独自の神経心理テストとMRIやPETスキャンを駆使して、認知症状が初発する数年も前にアルツハイマー病を早期診断し、予防的治療を行うことでも有名で多数の患者が外来を訪れる。
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