カルチャー
2016年4月20日
「サラダ油」は体に毒ってホント? ──認知症、アトピー、うつなどの原因にも
文・山嶋哲盛(脳科学専門医)
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抗ストレス作用が強い「米油」は天然の酸化防止剤


 揚げ物などで大量に油を使用するときには、上質の米油(米ぬか油)をおすすめします。
 米油は米ぬかから抽出した油で、植物油の中で唯一、γガンマオリザノールという成分を含んでいます。γオリザノールには抗ストレス作用があり、女性の更年期障害やうつ症状の緩和にも役立ちます。また、酸化を抑制する力も強く、天然の酸化防止剤として化粧品などにも使用されているほどです。
 さらに米油には食物繊維も多く、コレステロール値を下げる効果は、植物油の中でもっとも高いとされています。
 しかし、その成分の30%以上はリノール酸です。200℃以上の高温で加熱をすると、どうしても「ヒドロ」が発生します。そこで、米油を購入する際には100℃の蒸気のみで精製した「スチームリファイニング製法」による上質のものを選ぶようにしましょう。

「オリーブ油」も細胞を錆びから守る


 オリーブ油は、抗酸化作用が強いポリフェノールを豊富に含み、悪玉コレステロールを抑えるオレイン酸が成分の約80%を占め、リノール酸の含有量は10%以下という理想的な健康油です。加熱調理にも向いています。
 なお、安価なオリーブ油は傷んだ実や搾りかすを使ったり、高熱処理を施したりして製造した粗悪なものが多いからです。よく「ピュア・オリーブオイル」という名称のオリーブ油が売られていますが、これはふつうのオリーブ油に「エクストラバージン・オリーブオイル」を混ぜたものです。実は、「ピュア」でも何でもないので、ご注意ください。

「えごま油」と「亜麻仁油」で脳細胞を活性化


 炎症やアレルギーを抑制する働きがあるαリノレン酸を多く含んでいるのが、えごま油と亜麻仁油です。えごま油には60%以上、亜麻仁油には50%以上ものαリノレン酸が含まれています。
 えごまとはシソ科の植物で、その種を圧搾して抽出したのが、えごま油です。亜麻仁油は、茎の繊維からリネンを作る亜麻の花の仁(種子)から搾ったものです。

 両方とも加熱すると酸化しやすいので、ドレッシングやマヨネーズなど熱を通さない調理に向いています。開封後は冷蔵庫に入れて保管し、1~2カ月で使い切るようにしましょう。
 生ジュースやスープ、みそ汁に入れたり、サラダや納豆、冷や奴にかけると、とってもおいしくいただけます。

からだの細胞は、3か月で生まれ変わる


5つの「健康油」の特徴

 さて、ひと口に「健康油」といっても、粗悪なものもあれば、高品質のものもあります。それを見極めるには、「価格」がポイントです。

 品質のいい製品は、厳選された材料を使用して、手間と時間がかかる低温圧搾によって製造されます。米油のスチームリファイニング製法も、そのひとつです。米ぬかから大量 に米油を抽出するにはヘキサンという石油系の溶剤を使用せざるを得ません。そのヘキサンを抜くために高温処理を施すことが必要です。

 高温処理で大量生産した安価なものではなく、多少お値段が高くともデリケートな温度で精製処理をしたもののほうが安全でしょう。食用油を作るのに手間や時間をかければ当 然、大量生産はできません。そこで、高品質のものは価格も高くなるというわけです。

 では、具体的にいくらのものを選べばいいのかといえば、次のとおりです。

・オリーブ油やえごま油、亜麻仁油なら、1mlあたり10円前後
・ごま油や米油は、1mlあたり3~4円

 なお、『そのサラダ油があなたを殺す』(SBクリエイティブ刊)では、私が個人的におすすめするオイルを具体的な商品名と共に紹介しているほか、脱・サラダ油のためのレシピを掲載しましたので、参考にしていただけると幸いです。

 細胞は3か月以内に生まれ変わります。悪い油をやめて3か月間、からだにいい油に替えれば、しなやかでみずみずしい細胞に生まれ変わり、頭もからだもリフレッシュしていくことが実感できるはずです。

(了)


そのサラダ油があなたを殺す
アレルギー、うつ、認知症を防ぐ! 健康油の使い方
山嶋哲盛 著/上村 泰子(料理レシピ) 監修



山嶋 哲盛(やましまてつもり)
医学博士。脳科学専門医。金沢市生まれ。1975年、金沢大学医学部卒業、1979年、金沢大学大学院医学系研究科修了。その後、金沢大学医学部付属病院医局長、金沢大学医学部助教授などを歴任。現在、金沢大学大学院医薬保健学総合研究科・再生脳外科科長をつとめ、また金沢大学病院、南ヶ丘病院にて、「高次脳機能障害」専門外来で診療を行う。「リノール酸を多く含むサラダ油の摂取が認知症などさまざまな病気を引き起こす」と警鐘を鳴らす著書、『そのサラダ油が脳と体を壊してる』『認知症が嫌なら油を変えよう!』(以上、ダイナミックセラーズ出版)、『「サラダ油」をやめれば脳がボケずに血管も詰まらない!』(ワニブックス)が話題となる。また、診療にも定評があり、独自の神経心理テストとMRIやPETスキャンを駆使して、認知症状が初発する数年も前にアルツハイマー病を早期診断し、予防的治療を行うことでも有名で多数の患者が外来を訪れる。
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