カルチャー
2015年3月24日
昼夜逆転でも「腹時計」を整えれば病気が防げる!
[連載] 病気を防ぐ「腸」の時間割【1】
文・藤田紘一郎
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食事は体内時計のリセットのためにするもの


 「規則正しい生活をしましょう」

 健康の常識として、必ず出てくる決まり文句です。

 「わかっているけど、できない」
 「簡単にいうなよ」
 「その実践法を知りたいから、健康書を買ったんだ」

 そんな声が聞こえてきそうです。

 シフトワークの人は、仕事の時間がその日によって異なるので、規則正しい生活は難しいことかもしれません。昼夜逆転の生活を送っている人には、耳の痛い話だとも思います。

 ただし、体内時計の働きを整えるのは、そんなに難しいことではありません。「規則正しい生活」といわれると、生活を律することを求められるようで大変に感じますが、必要なのは「体内時計を整える」ということです。

 外界の生活時間と私たちの1日のリズムであるサーカディアンリズムには、周期にズレがあります。このズレを放っておくと、体内時計はどんどん狂っていくことになります。

 外界の生活時間と体内時計が大幅にずれて生じるのが、時差ボケです。時差ボケは、海外に飛行機で出かけていったときに起こると思われているかもしれません。

 体内時計の狂いは、外界との生活時間のズレから生じるものです。つまり、日本にいても、体内時計が乱れれば慢性的な時差ボケは生じるのです。

 これを解消するには、体内時計を整えて、サーカディアンリズムと外界の生活時間とのズレをリセットする必要があります。

 そのために第一に実践したいのが、朝陽を浴びながらの深呼吸です。
 同時に行ってほしいのは、1日3度の食事を決まった時間にすることです。

 食事は栄養素を摂取するためにあると思ったら、大間違いです。食事には体内時計のズレをリセットするという役目もあるのです。

空腹と食事でリズムを刻む「腹時計」


 「腹時計」という言葉があります。
 おなかの空きぐあいから時刻の見当をつけることです。時計のなかった時代には、天体の動きとともに、人は腹時計で時間を感じていました。

 私たち現代人は時計を見ながら生活する習慣がしみついているため、腹時計に頼ることは少なくなっていますが、腹時計は超能力的な感覚ではないことがわかっています。

 テキサス大学の柳沢正史教授は2006年に、腹時計の存在をマウス実験によって明らかにしました。柳沢教授は、腹時計が脳の視床下部の一部である「視床下部背内側核」(ししょうかぶはいないそくかく)という部位にあることを発見しています。

 体内時計は、脳内の「視交叉上核」(しこうさじょうかく)という部位にあります。これは、眼球と視神経により結ばれていて、太陽光の刺激によってリズムを刻んでいます。

 一方の腹時計は、体内時計と別の部位にあり、視交叉上核に依存していません。連動しているのは、腸の動きです。空腹と食事のリズムから時間を刻んでいます。
 腹時計の力はとても強く、これが狂うと体内時計まで乱れてしまうことがわかっています(「腹時計」については4月16日刊行の『病気を防ぐ「腸」の時間割』(SB新書)にも詳しく書いていますので、ぜひご一読ください)。

 たとえば、マウスは夜行性の動物であり、夜に活動し、昼間は眠るというリズムで活動しています。その習性を無視して、昼間だけエサを食べられるようにしておくと、本来のリズムから外れて、昼間にさかんに行動し、エサを食べるようになります。

 これは人間にも起こる現象です。夜間にたくさんのエネルギーを摂取すると、腹時計は夜間偏重にずれてしまいます。外界の生活時計とも、体内時計とも、大きく差が開いてしまうのです。

 こうなると、体内機構はどこにしたがえばよいのかわからなくなり、生体リズムは乱れます。当然、腸のリズムも狂い、腸に穴があく「リーキーガット症候群」の状態も進行することになります。

 体内時計を整えるには、腹時計を正常に働かせることが不可欠です。
 では、どのようにして腹時計を整えるとよいでしょうか。

3度の食事の度に体内時計をリセット!


 第一に、1日の生活は3度の食事の時刻から組み立てることです。食事の時刻は、おなかが「グ~ッ」と鳴るタイミングと、自分の行動パターンが重なるときを選ぶとよいと思います。

 その日にやらなければならない予定は、食事の間に組み入れるようにします。つまり、「仕事の合間に食事を入れていく」のではなく、「食事の合間に仕事をこなしていく」という考え方です。

 シフトワークの人も、この食事時間はなるべくずらさずに、合間にうまく仕事や睡眠を入れていきましょう。そうすることで、体内時計の乱れを抑えることができます。

 また、間食やダラダラ食べをしないことも大事です。電気を獲得した現代の生活では、光刺激に依存する体内時計は、どうしてもずれやすくなっています。常に強力な光を目が受けてしまう生活では、体内時計のリズムの振幅が小さくなり、活動と休息の時間のメリハリがなくなってしまうのです。

 だからこそ、3度の食事によって腹時計をしっかりと動かすことが重要です。腹時計がしっかり働いていると、体内時計が乱れてきても、食事のたびにズレをリセットできるようになります。

(了)





病気を防ぐ「腸」の時間割
老化は夜つくられる
藤田紘一郎 著



藤田紘一郎(ふじたこういちろう)
東京医科歯科大学名誉教授。昭和14年中国旧満州生まれ。三重県育ち。東京医科歯科大学医学部卒業。東京大学大学院にて寄生虫学を専攻。テキサス大学で研究後、金沢医科大学教授、長崎大学医学部教授を経て、昭和62年より東京医科歯科大学教授。専門は寄生虫学、熱帯医学、感染免疫学。日米医学協力会議のメンバーとして、マラリア、フィラリアなどの免疫研究の傍ら、「寄生虫体内のアレルゲンの発見」「ATLウイルスの伝染経路の発見」など多くの業績をあげる。日本寄生虫学会賞、講談社出版文化賞、日本文化振興会社会文化功労賞および国際文化栄誉賞受賞。著書に『笑うカイチュウ』(講談社)、『清潔はビョーキだ』(朝日新聞社)、『脳はバカ、腸はかしこい』(三五館)、『腸をダメにする習慣、鍛える習慣』『人の命は腸が9割』(以上、ワニブックス)、『体がよみがえる「長寿食」』(三笠書房)など多数。
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