カルチャー
2015年4月23日
21時以降の食事は命を縮める"毒"となる
[連載] 病気を防ぐ「腸」の時間割【5】
文・藤田紘一郎
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夜遅い時間の食事は避ける


 夕食の時間は、職業やその日の予定などによって違ってきます。理想をいえば、21時には食べ終わることです。理由は、主に2つあります。

 一つは、時計遺伝子の「BMAL1」の働きが21時以降急激に増えていき、深夜2時まで上昇し続けることです。BMAL1は、脂肪をため込ませる作用を持つタンパク質で、脂肪を分解する働きを抑える働きもあります。そのため、BMAL1は「肥満遺伝子」とも呼ばれます。

 この肥満遺伝子の働きが活性化する21時以降に食べたものは、脂肪となり、体のぜい肉を増やすことに使われてしまいます。

 肥満は万病のもとです。私たちは健康になるために食事をするのに、21時以降の食事は体を壊す〝毒〟ともなってしまうのです。

 では、21時までに夕食をとれなければ、食べないほうがよいのでしょうか。これもよくないのです。

 夕食を抜くと食間があき過ぎてしまいます。空腹感の強い状態が長く続くと、脳は「飢餓に備えろ」というスイッチを入れます。人間の脳は飢餓感に敏感です。

 飢餓スイッチを脳が押すと、体は低体温、低血圧の状態になり、消費エネルギーを節約する状態をつくり出します。同時に「脂肪をため込め」との指令を脳が発します。これによって、かえって脂肪が増えるという本末転倒の事象が起こるのです。

 21時までに夕食を終えたいもう一つの理由は、ここにあります。21時までに夕食をとれないからと一食抜いてしまえば、結局は肥満の体をつくることになります。

 では、夕食は何時にするのがベストでしょうか。BMAL1は18時以降に働きを高めていきますから、なるべく早い時間に夕食をとれば、脂肪が蓄えられる量は少なくなります。ただ、就寝前に空腹の状態になれば、寝つきが悪くなってしまいます。

 食後から就寝まで、短くても2時間はあけましょう。食後2時間がたつと、食べたものが胃から小腸に移動を始めます。小腸が活発に働き出すと、副交感神経がさらに活性化され、体は休息の状態を深めます。これにより速やかな入眠を期待できます。






病気を防ぐ「腸」の時間割
老化は夜つくられる
藤田紘一郎 著



藤田紘一郎(ふじたこういちろう)
東京医科歯科大学名誉教授。昭和14年中国旧満州生まれ。三重県育ち。東京医科歯科大学医学部卒業。東京大学大学院にて寄生虫学を専攻。テキサス大学で研究後、金沢医科大学教授、長崎大学医学部教授を経て、昭和62年より東京医科歯科大学教授。専門は寄生虫学、熱帯医学、感染免疫学。日米医学協力会議のメンバーとして、マラリア、フィラリアなどの免疫研究の傍ら、「寄生虫体内のアレルゲンの発見」「ATLウイルスの伝染経路の発見」など多くの業績をあげる。日本寄生虫学会賞、講談社出版文化賞、日本文化振興会社会文化功労賞および国際文化栄誉賞受賞。著書に『笑うカイチュウ』(講談社)、『清潔はビョーキだ』(朝日新聞社)、『脳はバカ、腸はかしこい』(三五館)、『腸をダメにする習慣、鍛える習慣』『人の命は腸が9割』(以上、ワニブックス)、『体がよみがえる「長寿食」』(三笠書房)など多数。
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