カルチャー
2015年10月19日
高齢者でも頭がしっかりしている人は「腸相」がいい
[連載] 認知症がイヤなら「腸」を鍛えなさい【3】
文・新谷弘実
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腸にも顔同様、「相」の良し悪しがあります。私は「腸相」と呼んでいますが、認知症になるかどうかのカギとなっています。腸相は、その人の食事と生活習慣の歴史を映す鏡となっているからです。実際、100歳を過ぎても頭がしっかりしている人は腸相がいいものです。つまり、高齢者でもきれいな腸相を保つことができれば、最期まで頭も身体もかくしゃくとしたまま、天寿をまっとうすることができるのです。今回は認知症を左右するとも考えられる腸相について解説していきます。


顔同様、腸にも「相」がある


 臨床医として日米35万人の身体の中を診続けてきて、私は「健康な人の腸は美しく、不健康な人の腸は美しくない」ということを実感として教えられました。
 腸の老化は、自分ではなかなか自覚することができないかもしれません。ですが、その兆候は小さな不調や症状となって必ず現れてきているものです。

 腸が健康であることは、脳の健康にもつながっていきます。この先は認知症患者さんの数がもっと多くなるといわれ、5人にひとりが認知症という時代がやってきます。その数の中に入るかどうかは、腸の健康にかかっているともいえるのです。

 腸の中の状態の良し悪しを、私は人相になぞらえて「腸相」と呼んでいます。人相にもいろいろあるように、内視鏡を通して目で見たときの腸の様子にも、よい姿と悪い姿とがあるからです。

 人相には、その人の倫理観や道徳観、性格や考え方の方向性、知性といった内面が刻まれています。それは一朝一夕に培われたものではなく、長い時間かけて築かれてきたものです。いわば人相は、その人の内面の歴史を映す鏡といってもよいでしょう。

 同じように、腸相の良し悪しも、その人がどのような生活をしてきたか、どのようなものを好んで食べてきたのかといった履歴で決まります。ですから腸相は、その人の食事と生活習慣の歴史を映す鏡といえるのです。

よい腸相の人は顔の相もよくて健康


 膨大な臨床経験からもいえることですが、腸相のよい人は、おしなべて心も身体も健康です。反対に、腸相のよくない人は心身のどこかにトラブルを抱えているか、いまは自覚がなくても、比較的早い段階でどこかにトラブルが生じます。

 さらにいえば、腸相と人相もじつは相関関係にあります。
 この場合の人相は、内面の精神性のことではなく、実際に皮膚の上に現れている顔色や肌の状態を指しますが、よい腸相の人は顔の相もよく、悪い腸相の人は肌が荒れたり、顔色がくすんでいたりして、実際の年齢よりも老けて見えることが多いのです。

 私が診てきた悪い腸相の人は、表情にも生気がなく、全身からいきいきとしたエネルギーが伝わってこないような人が少なくありませんでした。そうなる理由は、これまでお伝えしてきたとおりです。

 腸相が悪いということは、腸の状態が悪いということですから、免疫機能もその分低下します。腸内細菌のバランスも崩れた状態です。善玉菌は数を減らし、代わって悪玉菌が増えて、体内酵素の産生能力は落ち、脳の活性化に必要な物質の供給も減ります。つまり、生命力といってよい部分で滞りを生じてしまうのです。腸内細菌で善玉菌が重要視されるのはこのためです。

100歳でも頭がしっかりしている人は「腸相」もよい


 認知症と診断される方は70歳くらいから増えてきます。しかし、これは潜行していた脳細胞の変性が表面化した年齢ということであって、将来の認知症に至る芽ということでいえば、50歳ぐらいから出始めるとされています。そのため働き盛りの年代でも、腸相がよくなるような生活を心がけたほうがいいのです。

 腸相を悪化させるような生活が続いている人は、脳細胞にもよくない影響が及びます。腸の不調は脳に伝わり、脳の不調は腸に伝わるという「腸脳相関」による悪循環で、脳機能に少なからぬダメージを与えることになります。
 腸相の悪化は全身の病気を招き、脳の老化にもつながりますから、人生後半の生活の質を大きく落としてしまうことにもなります。

 私は高齢の方の腸もたくさん診てきました。一般的には、年齢が高いほど腸相も悪いという印象があるかもしれませんが、それは違います。

 最高齢の患者さんは105歳ですが、私が知る限り、100歳を過ぎている方で腸相が悪かったというケースには出合ったことがありません。
 そしてどの方も、身体の機能には弱りは出ていたものの、頭はしっかりとしていて、身体にも大きな病気は見られず、自らの足で私のクリニックへ通ってきてくださいました。

 経験からいって、最期まで頭も身体もかくしゃくとしたまま、天寿をまっとうして老衰で亡くなられる方は、きれいな腸相をしていることが少なくないのです。

 なぜ認知症になる人とならない人がいるのか、その境界線はいまもまだわかっていませんが、遺伝を原因とする認知症は数字的にそれほど多くを占めていないことや、生活習慣病があると発症リスクが高くなるといったことから考えても、それまでどのような生活をしてきたかというのは、ひとつの要因として大きいでしょう。

 少なくとも、腸相がきれいな高齢の方で、脳の機能が衰えていたケースを目にしたことがないのは事実です。このことから考えても、認知症になるのがイヤなら腸相をよくする生活習慣を心がけるべきなのです。

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認知症がイヤなら「腸」を鍛えなさい
新谷弘実 著



新谷 弘実(しんや・ひろみ)
1935年福岡県出身。医学博士。ベス・イスラエル病院名誉外科部長。米国アルバート・アインシュタイン医科大学外科元教授。1960年順天堂大学医学部卒業後、1963年に渡米。1968年に「新谷式」と呼ばれる大腸内視鏡の挿入技術を考案し、世界で初めて開腹手術をすることなく内視鏡による大腸ポリープ切除に成功。その技術によりガン発症リスクを大きく減少させ、医学界に大きく貢献する。日米で35万例以上の胃腸内視鏡検査と10万例以上のポリープ除去手術を行ったこの分野の世界的権威。著書にミリオンセラーになった『病気にならない生き方』シリーズ(サンマーク出版)、『胃腸は語る』(弘文堂)、監修に『免疫力が上がる!「腸」健康法』(三笠書房)など多数ある。