ビジネス
2013年11月29日
「デビル」と「エンジェル」 大型受注の獲得に欠かせないキーパーソンの見極め方
文・大西 孝明
「デビル」と戦い、大型受注を勝ち獲る方法とは
「エンジェル」にも「デビル」にも、社内の関係者を説得できる「社内影響力」と「商品理解力」があり、商品購入に「個人的利益」があります。ただし「デビル」には競合商品を購入することに「個人的利益」があるので、邪魔になる営業は全力で排除しようとします。営業は「デビル」と争って勝たなければ受注できないのです。
「社内影響力」を簡単に見極めるには、営業から商談相手に「決裁者」の紹介を頼めばよいのです。
「エンジェル」であれば、営業を「決裁者」に会わせて購入プロセスが進展することに「個人的利益」があるので快諾してくれます。
紹介を拒否すれば「デビル」か「担当者・窓口」なので、適切でない商談相手とわかります。ただし強力な「デビル」は味方を装い「紹介する」と嘘をつき「自分以外に決裁者の紹介を頼むな」と脅すこともあります。顧客に従順な営業は大型受注できません。
営業活動を制限する顧客は、営業が戦うべき「デビル」なのです。
商談相手の選択権は営業にあります。顧客の指図を受けてはいけません。
「エンジェル」が社内説明・根回しをするには「商品理解力」が必要です。しかし「商品仕様」が分かることが「商品理解力」と誤解している営業がたくさんいます。「エンジェル」であれば「決裁者」に聞かれることを確認します。
「決裁者」は「投資対効果」を推測できる成功事例には興味を持ちますが「仕様」に興味はありません。
「仕様」を知りたがるのは、商談に関与できない「技術オタク」か「市場調査マニア」です。
「個人的利益」は「エンジェル」が他社の営業をサポートするモチベーションです。仕事を効率したい、上司から言われた職務である、成功して昇格したいなど理由はいろいろですが、「エンジェル」自身も明確にわかっていないことが多いので、商談中の雑談から推測します。
私のいるIT業界では「顧客のトラブルは飯のタネ」とよく言います。既存ベンダーがトラブルを起こさなければ実績があるので安全安心な選択です。しかしトラブルが発生して責任追及をされた「キーパーソン」は、ベンダー変更が「個人的利益」になり商談に発展する可能性が高まるのです。
商談には「デビル」は必ずいるので、戦い方を知らなくてはなりません。多くの営業が「デビル」を説得して「エンジェル」にする努力しますが必ず失敗します。「デビル」が関係者の説得を一度始めたら、その後にもっと気に入った提案があっても、社内で信用を失うので絶対に意見を変えないからです。
「デビル」に勝つ正攻法は、多部署・多階層の「キーパーソン候補者」を訪問して「エンジェル」を増やす多数派工作です。より多くの「キーパーソン候補者」に会い続けることは次の大型商談にもつながります。
さらにできるだけ商談の早い段階で「エンジェル」に「決裁者」を紹介してもらい受注内定を取りつける努力も重要です。企業は「決裁者」の決定にしたがうので「デビル」を確実に制圧できます。
営業の仕事は、顧客訪問前から受注まで休むことなく戦略を考え続けることです。
「理論武装した営業」に変わって、「課題解決策」を提案して、「エンジェル」を掴まえて、「決裁者」を説得して大型受注を実現しましょう。
(了)
【著者】大西 孝明(おおにし たかあき)
東京都出身・東京農工大学工学部応用物理学科卒。大学卒業後に東証1部上場「ブラック企業」に入社、エンジニアを志望するも弱小事業部の御用聞き型ルートセールスに配属され失意の社会人生活を4年間続ける。その後、東京エレクトロンに転職して伝説の名機「DEC社のVAX-11」担当として多くの新規顧客を開拓に成功して営業を天職と思えるようになる。1999年に営業コンサルタントとして独立し、営業トレーニング・セミナー講師、新商品の営業戦略立案サポートを主業務としている。
東京都出身・東京農工大学工学部応用物理学科卒。大学卒業後に東証1部上場「ブラック企業」に入社、エンジニアを志望するも弱小事業部の御用聞き型ルートセールスに配属され失意の社会人生活を4年間続ける。その後、東京エレクトロンに転職して伝説の名機「DEC社のVAX-11」担当として多くの新規顧客を開拓に成功して営業を天職と思えるようになる。1999年に営業コンサルタントとして独立し、営業トレーニング・セミナー講師、新商品の営業戦略立案サポートを主業務としている。