ビジネス
2014年3月10日
失敗しない「習慣付け」のメソッド
[連載] ワン・シング ~一点集中がもたらす驚きの効果【3】
『ワン・シング』より
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一般に、成功する人は「規律正しい生活」を送る「規律正しい人」だと、広く信じられている。これは嘘だ。『ワン・シング』(ゲアリー・ケラー/ジェイ・パパザン 著)の中から、仕事の成功を妨げる「嘘」を紹介する本連載の最終回では、「規律正しさ」にまつわる嘘を紹介しよう。


すべてに「規律正しくなる」必要はない!


 やらなければならないとはわかっているが、実際にはできていないことがあるとき、よく「もうちょっと規律が必要だ」と言われる。しかし実は、必要なのは実行する習慣であり、その習慣を身につけるのに十分な規律さえあればいいのだ。

 「規律」は「習慣」と強く結びつき、成功の土台になる。自分を律するというのは、特定の行動が取れるよう自分を訓練することだ。それをつづければ、やがて日課に、つまり習慣になる。

 だから、「規律正しく」見える人がいたら、本当はその人は日常生活でいくつかの習慣を身につけた人なのだ。そうした習慣によって、実際はそうでなくても「規律正しく」見える。本当に規律正しい人などいない。

 そもそも、そうなりたい人などいるだろうか? あらゆる行動を型にはめ込み、訓練によってそれを維持するということは、とうてい不可能であり、また、ひどく退屈にも思える。

 成功するために規律正しい人間になる必要はない。事実、一般的に考えられているほどすべてに規律正しくなくても、成功することはできる。理由は単純だ。成功するためには正しいことを行う必要があるが、すべてを正しく行う必要はないからだ。

 成功の秘訣は、正しい習慣を見きわめ、訓練してそれを自分のものにすることだ。それだけだ。その習慣が生活の一部になれば、規律ある人に見えるようになるが、本当にそうなるわけではない。

 目指すべきは規律正しい人ではなく、日常で役立つものを身につけた人であり、それは日常的にそれに取り組むことで獲得できる。有用な規律を選んで実践し、効果的な習慣を身につけるのだ。

 アテネ、北京、ロンドンと、オリンピック3大会で18個もの金メダルを獲得した元競泳選手のマイケル・フェルプスは、子どものころ、注意欠陥多動性障害(ADHD)と診断された。幼稚園の先生は母親にこう言った。「マイケルはじっと座っていることができません。静かにしていることもできない......素質がないんです。息子さんはどんなことにも集中することができないでしょう」。

 しかし今日、母親は「マイケルの集中力にはびっくりさせられたわ」と話す。どうやってそうなったのか? 「どんなことにも集中することができなかった」少年が、どうやってこれほどのことをなしとげたのか?

 フェルプスは自分にとって有用な規律を身につけたのだ。

 14歳のときから北京オリンピックまで、フェルプスは週に7日、1年365日、練習をしてきた。毎日6時間は水の中にいた。フェルプスは一つの規律に全力を注ぎ、それが習慣──毎日泳ぐこと──になったといえるだろう。

 正しい習慣を身につければ、その報いは大きい。成功をもたらしてくれるのだ。しかし、ときに見落とされがちな別の思いがけない効果もある。それは生活をシンプルにしてくれることだ。何をすべきで何をすべきでないかがわかるから、生活がよりシンプルになる。事実、適切な習慣を身につければ、他のことではそれほど自分を律する必要がなくなるのだ。

 マイケル・フェルプスはプールで自分のスイートスポット、つまり核となるものを見つけた。やがて、そのための規律を見つけることで、人生を一変させる習慣を身につけたのである。





ワン・シング
一点集中がもたらす驚きの効果
ゲアリー・ケラー/ジェイ・パパザン 著  門田美鈴 訳



【著者】ゲアリー・ケラー
ケラー・ウィリアムズ不動産共同設立者・会長。テキサス州オースティンの一部屋で立ち上げた同社を一代で全米最大の不動産会社にまで育て上げる。現在はビジネス・コーチとしても活躍。権威あるアーンスト・アンド・ヤングの「アントレプレナー・オブ・ザ・ イヤー」にも選ばれている。「ニューヨーク・タイムズ」ベストセラーを獲得した著書「The Millionair Real Estate」シリーズは、累計で130万部超を売り上げている。

【著者】ジェイ・パパザン
米大手出版社ハーパーコリンズを経て、ケラー・ウィリアムズ社出版部門の統括責任者として、ケラーの多くの著書に共同執筆者として関わっている。

【訳者】門田美鈴(かどた みすず)
翻訳家。フリーライター。 訳書に『チーズはどこへ消えた?』(扶桑社)、『カエルを食べてしまえ! 』『1分間顧客サービス』(ダイヤモンド社)など、多数。



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