ビジネス
2014年5月14日
コリアンに占拠されるリトルトーキョー。日本は復権できないのか?
[連載] 日本人はなぜ世界での存在感を失っているのか【1】
文・山田順
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お家芸の自動車でも日本の影が薄くなりつつある


 シャープが「世界の亀山モデル」といって大型液晶テレビで日本市場を席巻したのは2004~2005年だったが、当時すでに、日本製のテレビはアメリカの家電販売大手ベストバイでは片隅に追いやられていた。これは、欧州も同じ、アジアでも同じだった。「日本製は高性能だけど高い」と、性能を重視するアメリカ人ですら日本製を避けるようになった。2011年、たまたまベストバイに行ったとき、サムスンなどの19型液晶テレビが100ドル(当時1ドルは80円だったので8000円)を切って売られているのを見て、私は衝撃を受けた。 それ以前、2000年代の初め、アメリカに入国するときの入国審査ブースで審査官が使っているPCがサムスンなのを見たときも、衝撃を受けた。それまでは、東芝やデルだったからだ。日本と違って、ケーブルテレビ網が全土に行きわたっているアメリカでは、テレビはあくまで番組を見るためのモニター扱いである。録画などの付加価値機能はついていない。それでも100ドル以下とは、破格の安さである。

 10年前まで、アメリカの家庭にあるテレビはほとんどソニーなどの日本製だった。それがいまやどの家に行ってもサムスンであり、ホテルの客室のテレビもサムスンかLGである。欧州でも中国でもホテルに泊まると、私たちはサムスンやLGのテレビで番組を視聴しなければならなくなった。

 家電だけではない、自動車でも日本の影は薄い。トヨタ、ホンダは健在だが、アメリカでは韓国車もどんどん普及している。韓国現代自動車(ヒュンダイ)は、販売台数で世界トップ5に入るようになり、主力車「エラントラ」は2012年に「北米カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞してしまった。中国でも、たとえば北京のタクシーはヒュンダイばかりだ。日本国内の自動車市場はすっかり冷え込み、軽自動車しか売れないガラパゴス市場になっている。これでは、携帯やテレビがガラパゴス化して家電敗戦を喫したのと同じ状況が起こりかねない。

世界で失墜している日本ブランドの現況


 ブランドコンサルティング企業「インターブランド」は、毎年恒例の世界のブランド価値評価ランキングを発表している。その「Best Global Brands 2013」によると、1位はアップル、2位はグーグル、3位はコカ・コーラと、いずれもアメリカ企業である。

 このランキングは、世界規模で事業を展開する企業を対象に、ブランド価値を金額に換算してランク付けするもので、100位までランキングされる。

 この100位までに、日本からは7ブランドが入っている。トヨタ(10位、前年比17%増)、ホンダ(20位、同7%増)、日産(65位、同25%増)の自動車ブランドは毎年のように健在だが、キヤノン(35位、前年比9%減)、ソニー(46位、同8%減)、任天堂(67位、同14%減)、パナソニック(68位、同1%増)はいずれも前年からランクダウンしている。

『日本人はなぜ世界での存在感を失っているのか』より ※クリックすると拡大

 【図表】は、このランキングからアジアブランドを抜き出したもの。韓国からは、サムスン、ヒュンダイ、キア(起亜自動車)がランクインしている。サムスンが8位で、ランクインしたすべての日本企業の上にいる。当然だが、日本企業が海外で元気でなければ、日本の存在感もイメージも希薄になる。

 かつてはゲームと言えば「ニンテンドー」、テレビと言えば「ソニー」だったが、これだけ日本ブランドが失墜すると、日本に対するアメリカ人の意識も大きく変わった。外務省が2013年1月19日に発表した、米国で実施した対日世論調査のなかの「アジアで最も重要なパートナー」という設問では、中国が39%で1位となり、日本の35%を上回った。これは毎年調査されているが、ここのところ中国が上回るようになり、今回は15ポイントもの急減となった。

 ただ、この調査にはなぜか韓国が含まれていない。もし、含まれていれば、中・韓合わせて半数以上に達するだろう。

(第1回・了)





日本人はなぜ世界での存在感を失っているのか
山田順 著



【著者】山田順(やまだ じゅん)
1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社 ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースも手掛ける。著書に、『出版大崩壊』、『資産フライト』、『脱ニッポン富国論「人材フライト」が日本を救う』(いずれも文春新書)、『本当は怖いソーシャルメディア』(小学館新書)、『新聞出版 絶望未来』(東洋経済新報社)、翻訳書に『ロシアン・ゴットファーザー』(リム出版)など。近著に、『人口が減り、教育レベルが落ち、仕事がなくなる日本』(PHP 研究所)、『税務署が隠したい増税の正体』(文春新書)、『日本人はなぜ世界での存在感を失っているのか』(SB新書)がある。
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