ビジネス
2014年5月14日
コリアンに占拠されるリトルトーキョー。日本は復権できないのか?
[連載]
日本人はなぜ世界での存在感を失っているのか【1】
文・山田順
日本は、長引く経済の低迷によって、世界での存在感を失ってきたが、そこにつけ込むように始まった中・韓の反日キャンペーン。いったい、私たちはどうすればいいのだろうか? グレンデールの慰安婦像、ロスのリトルトーキョーの崩壊などの現場を歩いたジャーナリスト・山田順の著書『日本人はなぜ世界での存在感を失っているのか』から、世界市場での日本製品・日本ブランドの失墜の原因と打開策を探る本連載。第1回目は、世界で存在感を失いつつある日本の現状を見ていこう。
リトルトーキョーはいまや"リトルソウル"に
アメリカに行くたびに感じるのは、韓国パワーのすごさだ。そして、韓国パワーと反比例するように、日本の存在感が薄くなっていることを実感する。
たとえば、ロサンゼルスの日本人街(リトルトーキョー)は、いまや"リトルソウル"と呼んだほうがいい。1980年代、日本がバブル景気で絶頂期にあったときは、この街は日本人観光客であふれ、24時間戦う日本人ビジネスマンが、日系人が経営する日本料理店で酒を酌み交わしていた。ロサンゼルスは昔から在米日系人が多く住み、リトルトーキョーは、日系人の第二の故郷だった。私もロサンゼルスに行くたびにリトルトーキョーで知人と食事し、そばのニューオータニによく泊まった。
しかし、いまのリトルトーキョーは、韓国資本、韓国商店に占領され、日系の店は3割程度しかない。ニューオータニが韓国系資本に売却されて「京都グランドホテル」(現在は「ダブルツリー」)と名前を変え、「日本ビレッジ・プラザ・モール」も外国資本に売却されたころから、街の中の店という店が韓国人の経営に変わってしまった。
リトルトーキョーのそばのファーストストリート両サイドでは、2000年代に入ると建売住宅が建ち、ここにコリアンたちが住み始めた。また、近隣のアートディストリクトの東側に再開発でコンドミニアムが建てられると、ここにもコリアンたちが大挙してやって来た。そうして気がつくと、リトルトーキョーもいつの間にかコリアンタウンに変貌してしまったのだ。
リトルトーキョー周辺へのコリアンの移住ラッシュは、この地区が他地区に比べて物件価格が安かったことと、コリアンタウンにも近かったからだ。前記したコンドミニアムのなかには、案内表示がハングルと英語の併記で、コリアンの入居率は7割を超えるところもあるという。
リトルトーキョーやジャパンタウン再建の必要性
このようなコリアンラッシュ以前から、リトルトーキョーによく顔を出していた日本人駐在員たちの姿は少なくなっていた。彼らは、トヨタやホンダなどの日系企業がオフィスを構えるトーランスやガーデナなどのサウスベイ地区、オレンジカウンティに住むようになり、日系コミュニティもそちらに移ってしまったからだ。それとともにリトルトーキョーでは3世、4世の世代が先代から受け継いだ店を売って郊外に出て行ってしまった。 これでは、リトルトーキョーがコリアンに占拠されても仕方がない。
リトルトーキョーのそばにある日米文化会館では理事会の運営をめぐって内部争いが起こり、日本領事館も街の変化を指をくわえて見ているだけだった。日本は中国や韓国と比べると、海外に居住する同邦、長期滞在者を大事にしない。大使や領事など日本から派遣されてきた役人は、赴任期間をそつなくこなして引き揚げるだけで、いつも東京の方向ばかりを見て仕事をしている。これは企業駐在員も同じだ。
本来なら、日系コミュニティを積極的に支援すべきなのに、外交官たちは、日系移民とその子孫たちは別世界の住民だと考えているかのようだ。
日本政府は現在、国土強靭化で国内のインフラに巨額を投じている。その費用の一部を海外に振り向け、リトルトーキョーやジャパンタウンを再建するべきだろう。強靭化が国内ばかりでは、日本が本当に強靭化したことにはならないはずだ。
日系人はアジア系でもマイナーになりつつある現実
カリフォルニアはアジア系住民が多いが、ヒスパニック系住民、白人住民のなかには日・中・韓の区別がつかない人間もいる。私も店に入っていきなり「ニーハオ」と言われたり、日本から来たと言うと「ソウルからか?」と言われたりしたこともある。日本人はもはやアメリカにおいて、アジア系のなかでもマイノリティなのである。
アメリカばかりではない。カナダでも韓国系住民は増えていて、人口比では日系人の10倍になるという。ちなみに、中国系はもっと多く、カナダ第3の都市バンクーバーは、ホンクーバー(香港をもじって)と呼ばれているのは有名な話だ。バンクーバーの住民のうち非白人の占める割合は現在40%ほどだが、あと10年で50%を超えるとされている。そして、さらに10年もすれば、エスニックグループの第1位が中国系になるだろうと予測されている。もちろん、それに続くのが韓国系だ。
これは東部のトロントも同じで、ここにはロサンゼルスに次ぐ大規模なコリアンタウンがある。カナダでは中国人、韓国人が増えすぎたため、投資家ビザを厳しくしたり、移民法を改正したりする動きまで出ている。
オーストラリアでも「ここは韓国か」と見間違うほど、大都市のダウンタウンには韓国商店が軒を連ね、韓国式歓楽街になっているところがある。もはや、世界中でアジアと言えば日本ではなく、中国・韓国が先に来る時代になった。家電製品と言えば韓国製、中国製ばかりソニー、パナソニック、シャープという日本を代表する家電メーカーが大幅な赤字を計上して、「家電敗戦」と言われた2012年のずっと前から、海外ではテレビといえばサムスンやLG、洗濯機・冷蔵庫といえばハイアールになっていた。
【著者】山田順(やまだ じゅん)
1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社 ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースも手掛ける。著書に、『出版大崩壊』、『資産フライト』、『脱ニッポン富国論「人材フライト」が日本を救う』(いずれも文春新書)、『本当は怖いソーシャルメディア』(小学館新書)、『新聞出版 絶望未来』(東洋経済新報社)、翻訳書に『ロシアン・ゴットファーザー』(リム出版)など。近著に、『人口が減り、教育レベルが落ち、仕事がなくなる日本』(PHP 研究所)、『税務署が隠したい増税の正体』(文春新書)、『日本人はなぜ世界での存在感を失っているのか』(SB新書)がある。
1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社 ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースも手掛ける。著書に、『出版大崩壊』、『資産フライト』、『脱ニッポン富国論「人材フライト」が日本を救う』(いずれも文春新書)、『本当は怖いソーシャルメディア』(小学館新書)、『新聞出版 絶望未来』(東洋経済新報社)、翻訳書に『ロシアン・ゴットファーザー』(リム出版)など。近著に、『人口が減り、教育レベルが落ち、仕事がなくなる日本』(PHP 研究所)、『税務署が隠したい増税の正体』(文春新書)、『日本人はなぜ世界での存在感を失っているのか』(SB新書)がある。