カルチャー
2014年6月24日
あなたの腸内細菌は母親から受け継いだもの!
[連載] 『腸をダマせば身体はよくなる』より【3】
辨野義己
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ストレスで善玉菌が減り、悪玉菌が増える


 腸内細菌のバランスは、食生活だけで決定づけられるものではありません。精神状態によっても、大きく左右されるのです。たとえば、ストレス状態が続くと善玉菌が減り、悪玉菌が増えます。

 職業柄、便秘に関する相談をよく受けるのですが、動物性脂肪が少なく、食物繊維の多い食事やヨーグルトを摂り、適度な運動を続けても、なかなか便秘が解消しない人の場合、たいていはストレスが原因となっています。

 なぜわかるかというと、「ウサギの糞のようなコロコロとした丸いウンチが出ませんか?」と聞いてみると、「そういえば最近、そういうウンチがよく出ます」といった答えが返ってくるからです。このようなウンチが出るのは、ストレスによって腸管運動が悪くなっているからです。

 便秘とは逆に、過敏性腸症候群のようにストレスが原因で下痢になることもありますが、これは腸が過敏に収縮し、排便異常が起こるからです。

 いずれにせよ、ストレスは腸内細菌に大きな影響を与えるため、善玉菌が減って悪玉菌が増えてしまうのです。

 ストレスと腸内細菌に関する報告は、昔からありました。

 たとえば、1976年、NASA(アメリカ航空宇宙局)は宇宙飛行士と腸内細菌に関する研究を行っています。宇宙飛行士というのは、地球への帰還時、非常に大きなストレスを受けます。実際、スペースシャトルに乗った3人の宇宙飛行士の腸内細菌を調べたところ、帰還時の精神的ストレスから善玉菌が減り、悪玉菌が増えていたのです。また、違ったストレスとして、ご主人を自ら射殺するという恐怖心を受けた女性の腸内細菌の解析でも、同様の悪玉菌が増えていたと報告されています。

 動物でも、ストレスと腸内細菌に関する実験は行われています。

 たとえば、ニワトリを使った実験では、室温を42℃にして3日間飼育し、その後2日間は常温に戻す、といったことを何度か繰り返したニワトリの腸内細菌を調べました。ニワトリの体温は40℃ほどなので、当然ストレスがかかります。

 実験の結果は、やはり善玉菌が減って悪玉菌が増え、腸内細菌のバランスが変わっていたのです。ラットを使った実験では、密飼いで過密ストレスをかける、といった内容でしたが、ニワトリの実験同様の結果が出ました。

 このように人間だけでなく動物までも、ストレスを受ければ善玉菌が減って悪玉菌が増え、腸内細菌のバランスが崩れてしまうのです。

(第3回・了)





腸をダマせば身体はよくなる
辨野義己 著



【著者】辨野 義己(べんの よしみ)
1948年大阪府生まれ。独立行政法人 理化学研究所バイオリソースセンター微生物材料開発室長。 農学博士。DNA解析により腸内細菌を多数発見。腸内細菌と病気との関係を広く調べ、ビフィズス菌・乳酸菌の健康効果を広く訴えている。「うんち博士」としても、テレビ・雑誌等マスコミに登場。ヤクルト、協同乳業、ビオフェルミン、フジッコ、森永乳業、東亜薬品工業など7社出資で、理化学研究所内に辨野義己特別研究室を開設。著書に『大便通』(幻冬舎)、『見た目の若さは腸年齢で決まる』(PHP)、『腸をダマせば身体はよくなる』(SB新書)などがある。



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