ビジネス
2014年6月9日
一瞬で決算書を読んで「儲かっている会社」を見抜く方法
[連載] 一瞬で決算書を読む方法【2】
文・大村大次郎
  • はてなブックマークに追加

決算書上は儲かっているはずなのに本当は儲かっていない会社


「儲かっている企業は、黒字が出ている企業だろう?」
「そんなのを見つけのるのは簡単じゃないか」

 そう思われる方もいるだろう。

 しかし、事はそんなに単純ではない。

 決算書上、黒字が出ていても、実際には儲かっていない企業も多々存在するのだ。企業は、「銀行からお金を借りたい」「取引先の心象をよくしたい」などの理由で、粉飾決算をすることが時々ある。もし、決算書を鵜呑みにしてしまえば、そういう企業に税務調査をしてしまうのである。

 粉飾決算の企業に、税務調査をした場合、下手をすれば税金を還付しなければならなくなる。原理原則を言うならば、税務調査で税金を払い過ぎていることがわかれば、国税調査官は、税金還付の処理をしなければならない。そんなことをすれば、勤務評定でマイナス評価をされてしまうのである(ただし企業側も粉飾決算の是正を望まないことが多いので、大抵の場合は黙殺されることになる)。

 だから国税調査官は、税務調査に行く前の段階で、決算書の情報から儲かっている企業を確実に探し当てることに、必死になるのだ。

本当に儲かっている会社の決算書とは?


 では、本当に儲かっている決算書とはどのようなものか?

 もっともオーソドックスなものは、「売上が急増しているのに利益が増えていない」という企業である。これは脱税している企業にもっとも多い決算書の特徴なのである。

 普通、売上が増えれば、それに伴って利益も増えるはずである。しかし、売上が増えているのに、利益が増えていない、ということは、わざと経費を膨らませて利益を少なくしている可能性が高いのだ。

 国税調査官が、税務調査対象を決めるとき、もっとも優先的にピックアップするのが、この「売上が急増しているのに利益が増えていない決算書」である。

 そして、「売上が急増しているのに、利益が増えていない決算書」を見つけるのは、実に簡単なのである。

 「売上」と「利益」を数年分、比較すればいいだけなのだ。

 つまり、国税調査官というのは、極端な言い方をすれば、決算書の中で「売上」と「利益」しか見ていないということである。

 「売上」「利益」という勘定科目は、企業会計の超基本的なものであり、会計を知らない人でも、なんとなく内容の想像がつくものだろう。

 「売上」はその企業がモノやサービスを売った金額の合計のことである。
 「利益」は売上から経費を差し引いた残額である。

 この2つの勘定科目を分析するだけで、企業の本質のかなりの部分を見抜くことができるのだ。もちろん、ただ漠然と2つの「売上」と「利益」の数字を眺めるのではなく、ちょっとしたコツはある。

 次回は、そのコツについてより具体的にご紹介していきたい。

(第2回・了)





一瞬で決算書を読む方法
税務署員だけのヒミツの速解術
大村大次郎 著



【著者】大村 大次郎(おおむら おおじろう)
大阪府出身。元国税調査官。国税局で10年間、主に法人税担当調査官として勤務し、退職後、経営コンサルタント、フリーライターとなる。執筆、ラジオ出演、フジテレビ「マルサ!!」の監修など幅広く活躍中。主な著書に『あらゆる領収書は経費で落とせる』『税務署員だけのヒミツの節税術』(以上、中公新書ラクレ)、『税務署が嫌がる「税金0円」の裏ワザ』(双葉新書)、『無税生活』(ベスト新書)、『決算書の9割は嘘である』(幻冬舎新書)、『税金の抜け穴』(角川oneテーマ21)など多数。最新著書は『一瞬で決算書を読む方法』(SB新書)
  • はてなブックマークに追加