カルチャー
2014年9月11日
史上最低金利だからこそ気をつけたい「住宅ローンの罠」
[連載] 不動産を買うなら五輪の後にしなさい【3】
文・萩原 岳
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連帯保証債務はどこまでも追いかけてくる


 金融機関は商売であなたに住宅ローンを融資します。商売である以上、儲けなくてはいけませんし、最悪でも損をしてはいけません。

 計画的な返済が可能かどうか事前に審査はしますが、それでも融資実行の際にはマイホームを担保にとり、場合によっては連帯保証人も要求します。主たる債務者と仲がいい時は問題ないのですが、縁が切れてしまったとしても連帯保証債務はどこまでも追いかけてきますので、注意が必要です。

 例えば、夫名義で住宅ローンを契約し、妻が連帯保証人になりましたが、その後夫婦仲がこじれ、離婚をし、自宅は夫が住みローンも返済することになったとします。離婚から数年たち、前夫とも音信不通になった頃、突然保証会社から「ローン残額を一括で払え」と支払通知がくる、という事態も起こりえます。

 これは、前夫が滞納を繰り返したり、支払いができず自己破産をしたケースが想定されますが、連帯保証人となっている限り、離婚をしても、自分がそこに住んでいなくても、返済義務から逃れることはできないのです。返済を引き継ぐか、それとも自己破産をするかを選ぶことになるでしょう。

教育費とのバランス、相続などにも要注意 ~異なるローンを2つ組むワザも


 共働き世帯は、収入源が2つあるため、住宅ローンの選択肢に幅があります。夫婦で別々のローンを組むことができますので、変動と固定で金利タイプを分散したり、返済期間を変えてみたりすることで、出費の増減に柔軟な対応をとることができます。ただし、世帯収入が多いからといって、限度を超えて借りてしまうと、自分たちの首を絞めることになりますので、コントロールしなくてはいけません。

 また、収入源が1つしかなく子どもがいる世帯は、教育費とのバランスを重視する必要があります。金利上昇による支払額の増加と教育費のピークが重ならないようにするには固定金利が向いているでしょうし、異なるローンを2つ組み、1つは期間を短くして教育費のピークが来る前に完済してしまうプランも考えられます。

 また、2世帯住宅に親と同居する世帯は資金面で協力することができるので、こちらも選択肢が広がります。親子別々でローンを組む(親子ペアローン)こともできますし、親の債務を引き継ぐ(親子リレーローン)もできます。その際、親子で区分登記をしてしまいますと、相続税の「小規模宅地の特例」が一部にしか適用されなくなってしまいますので、注意が必要です。

 また、他に推定相続人(兄弟など)がいる場合は、後々もめないようしっかりとした準備が必要です。特に、相続財産に占める自宅の割合が大きい場合は争う可能性が高くなりますので、親が生存中に話し合いの場を設けコミュニケーションを十分に図っておきましょう。

(第3回・了)





不動産を買うなら五輪の後にしなさい
不動産鑑定士がこっそり教える売買のコツ
萩原 岳 著



萩原 岳(はぎわら がく)
千葉県生まれ。東京外国語大学中国語学科卒業。株式会社アプレ不動産鑑定 代表取締役。不動産鑑定士。在学中より不動産鑑定業界に携わり、2007年不動産鑑定士論文試験合格、2010年不動産鑑定士として登録する。数社の不動産鑑定士事務所勤務を経て、2014年株式会社アプレ不動産鑑定を設立し、現職。相続税申告時の不動産評価など税務鑑定を専門とし、適正な評価額の実現を掲げ、相続人と共に「戦う不動産鑑定士」として活動する。また、実務で培った経験をもとに、「相続と不動産」について税理士、弁護士、不動産鑑定士など相続の実務家を相手とした講演活動も行っている。
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