カルチャー
2015年1月5日
青山学院大学を箱根駅伝・優勝に導いた、中野ジェームズ修一の「ストレッチ新常識」とは?
『運動前のストレッチはやめなさい』より
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「ストレッチをしてアキレス腱を伸ばす」は間違い


アキレス腱はそもそも伸びない

 スポーツ選手に限らず、日常生活のちょっとした動きでアキレス腱を傷めたり、ひどい場合には断裂したりするケガに襲われることがあります。

 そこで予防のために「ストレッチをしてアキレス腱を伸ばす」ことが大切だと思い込んでいる人もいるようですが、これも間違いです。そもそも「腱(テンドン)」は筋肉と違って伸びないのです。

 腱とは筋肉の末端部分で骨に付着している部分。先端は骨の内部に侵入しており、骨と筋肉をしっかり連結しています。

 腱を構成しているのは、コラーゲンからなる線維状の組織と腱細胞(テンドン・セル)。伸び縮みすることはほとんどなく、1当たり500㎏もの引っ張りに耐えられる頑丈さがあります。

 それだけ引っ張る力に対して強い抵抗力を発揮する腱が、自体重を使ったストレッチくらいで伸びるわけはありません。

「ストレッチをしてアキレス腱を伸ばす」という人がやっているのは、多くの場合ふくらはぎの筋肉のストレッチです。ふくらはぎにある「下腿三頭筋」の末端がアキレス腱となり、かかとの骨についているのです。

 ふくらはぎはランニングなどの動作で疲労が溜まりやすいところなので、下腿三頭筋のストレッチ自体は有効なのですが、それをアキレス腱のケアと混同しないようにしましょう。

 なお、アキレス腱がなぜ切れるのかは、まだわかっていません。

 アキレス腱は人体最大の丈夫な腱で、体重の7~8倍の重みに耐えられます。そんな最大にして最強の腱が、スポーツ中の激しい動きの最中に切れるのであればまだ納得できるのですが、日常生活の些細な動きでも切れることがあるのです。

 そして残念なことに、ふくらはぎの下腿三頭筋をストレッチしても、それがアキレス腱断裂の予防に直接つながるという科学的根拠はありません。






運動前のストレッチはやめなさい
体を痛めず硬さをほぐす 効果倍増メソッド
中野 ジェームズ 修一 著



【著者】中野 ジェームズ 修一
パーソナルトレーナー/フィットネスモチベーター。1971年生まれ。効率的、かつ継続させる独自のメソッドで、クルム伊達公子選手、福原愛選手などの数多くのトップアスリートやモデルなどから絶大な信頼を受け、3年先まで予約が埋まっている。『Tarzan』(マガジンハウス)など雑誌のエクササイズ監修は300冊を超え、全国各地での講演活動も多数行っている。アメリカスポーツ医学会ヘルスフィットネススペシャリスト/早稲田大学エクステンションセンター講師日本コアコンディショニング協会マスターA級講師など。著書に『運動前のストレッチはやめなさい』『マラソンは最小限の練習で速くなる!』『ランニングの作法』『ヒザ・腰・肩の痛みは自分で消せる!』『一流の人がやる気を高める10の方法』『体が若返る10の生活習慣』(いずれもSB新書)など。ニッポン放送『上柳昌彦 ごごばん !』、テレビ東京『ソロモン流』などに出演。
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