カルチャー
2015年1月5日
青山学院大学を箱根駅伝・優勝に導いた、中野ジェームズ修一の「ストレッチ新常識」とは?
『運動前のストレッチはやめなさい』より
「ストレッチをしてウォーミングアップ」は間違い
静的ストレッチではウォーミングアップにならない
ウォーミングアップとは、その名の通り、カラダを「温める」ためのものです。
私たちのカラダは、安静時には体内に流れている血液のおよそ15%しか筋肉に供給していません。安静時は脳や内臓などのほうに多くの血液が巡っているのです。
ところが運動を始めると、その主役となる筋肉がより多くの血液を必要とします。血液が酸素や栄養素を運んできてくれないと、筋肉は動けないからです。
そのため、運動前にウォーミングアップをしてカラダを温め、全身の筋肉の血液循環を良くしておくと運動のパフォーマンスが向上します。
ランニングの場合、ウォーミングアップをしないでいきなり速いペースで走り出すと筋肉と関節の動きが悪く、思ったようなペースで走れないばかりか、故障の原因にもなります。筋トレの場合も同じように、ウォーミングアップなしではいきなり重いウェイトを挙げられません。
しかし、ウォーミングアップのために、ストレッチをするというのは間違いです。
ウォーミングアップの重要性を理解している人でさえ、「運動前にストレッチをしてウォーミングアップをする」と誤解しているケースは少なくありません。
静的なストレッチでは筋肉は温まりませんから、ウォーミングアップにはならないのです。
そう指摘すると、「スポーツ選手は試合前にストレッチをしてウォーミングアップしているじゃないですか!?」と反論されることもあります。
たしかに、プロ野球の練習風景をテレビで観たりすると、選手たちが本練習の前にストレッチをしているシーンが流れることがあります。でも実際のところ、選手たちはストレッチをする前、カラダを温めるために軽くジョギングをするなどして、すでにウォーミングアップを済ませているのです。
これは想像ですが、テレビでは選手たちがだらだらとジョギングをしている風景を流すより、ストレッチをしている風景のほうが"絵になる"という判断から、ストレッチをする光景をよく流しているのだと思います。
それだけに視聴者の脳裏には、「スポーツ選手はストレッチをすることでウォーミングアップをしている」という先入観が定着しているのでしょう。
ストレッチにも、ウォーミングアップとして使えるものもあります。それは、筋肉や関節をダイナミックに動かす動的ストレッチ(ダイナミック・ストレッチング)です。
そのストレッチのやり方と効果については、SB新書『運動前のストレッチはやめなさい』で解説していますので、興味のある方は読んでいただけると幸いです。
【ウォーミングアップは15分間が目安】
運動前にストレッチをするなら、ウォーミングアップをしたあとにしましょう。
筋肉が温まらない(冷たい)うちにストレッチをして半ば無理矢理に筋肉を伸ばそうとすると、ミクロの微小なレベルで筋肉が損傷する恐れがあるからです。
では、正しくウォーミングアップをするには、どうすればいいのでしょうか? 答えは簡単、ウォーキングやジョギングをするのです。
筋肉は温かいほうが伸びやすい性質があります。その点、全身の筋肉のおよそ3分の2は下半身に集中していますから、ウォーキングやジョギングで下半身をゆっくりと動かし続けることで筋肉の血液循環が良くなり、効率的にカラダが温まるので筋肉が伸びやすくなるのです。
ウォーキングをするといっても、ウインドーショッピングのようにダラダラ歩くのでは、ウォーミングアップにはなりません。また、ジョギングをするといっても、速すぎるペースでは筋肉が温まる前に本格的な運動をしてしまうことになるので、筋肉に過剰な負担がかかってしまいます。
ウォーキングやジョギングでのウォーミングアップは、息が切れない程度のゆったりとしたペースを目安にすると効果的です。
またウォーミングアップは、そのペースに加えて、どれくらいの時間やるかも大切なポイントになります。
専門的な研究によると、ウォーキングやジョギングでカラダを温めてストレッチにふさわしい体内環境を整えるには、春夏秋冬の寒暖差にかかわらず、最低でも15分間くらい続けるべきだとされています。
カラダが冷えきっている冬場はもちろんのこと、じっとしていても汗が出るような真夏の猛暑日でも安静時には筋肉が温まっていないので、ストレッチ前のウォーミングアップには季節にかかわらず15分間くらい必要だということです。
カラダの内側から暑くなり、汗がじんわりと出てくるくらいまで続けるのを目安にするといいでしょう。
【著者】中野 ジェームズ 修一
パーソナルトレーナー/フィットネスモチベーター。1971年生まれ。効率的、かつ継続させる独自のメソッドで、クルム伊達公子選手、福原愛選手などの数多くのトップアスリートやモデルなどから絶大な信頼を受け、3年先まで予約が埋まっている。『Tarzan』(マガジンハウス)など雑誌のエクササイズ監修は300冊を超え、全国各地での講演活動も多数行っている。アメリカスポーツ医学会ヘルスフィットネススペシャリスト/早稲田大学エクステンションセンター講師日本コアコンディショニング協会マスターA級講師など。著書に『運動前のストレッチはやめなさい』『マラソンは最小限の練習で速くなる!』『ランニングの作法』『ヒザ・腰・肩の痛みは自分で消せる!』『一流の人がやる気を高める10の方法』『体が若返る10の生活習慣』(いずれもSB新書)など。ニッポン放送『上柳昌彦 ごごばん !』、テレビ東京『ソロモン流』などに出演。
パーソナルトレーナー/フィットネスモチベーター。1971年生まれ。効率的、かつ継続させる独自のメソッドで、クルム伊達公子選手、福原愛選手などの数多くのトップアスリートやモデルなどから絶大な信頼を受け、3年先まで予約が埋まっている。『Tarzan』(マガジンハウス)など雑誌のエクササイズ監修は300冊を超え、全国各地での講演活動も多数行っている。アメリカスポーツ医学会ヘルスフィットネススペシャリスト/早稲田大学エクステンションセンター講師日本コアコンディショニング協会マスターA級講師など。著書に『運動前のストレッチはやめなさい』『マラソンは最小限の練習で速くなる!』『ランニングの作法』『ヒザ・腰・肩の痛みは自分で消せる!』『一流の人がやる気を高める10の方法』『体が若返る10の生活習慣』(いずれもSB新書)など。ニッポン放送『上柳昌彦 ごごばん !』、テレビ東京『ソロモン流』などに出演。