デザイン側もディレクション側に一歩歩み寄る努力をしよう

　この話で考えてみると、ディレクション側は、サービスのビジネスモデルを考え、マネタイズを考え、さらにWebサイトに載せる情報の整理や、ワイヤー作成までしてくれています。

　情報の整理やワイヤー作成は、デザイナーもいっしょにやったほうがいろいろと表現の選択肢も広がるところを、ディレクション側だけでやろうとしています。

　一方でデザイン側はというと、それをただ待っているだけで、出てきたものに対して文句を言いながらデザインする、という状況も見えてきます（実際にそういう話もよく聞きます）。

　その視点で考えてみると、ディレクション側は、デザイン側がある程度やりやすいように、と考えてくれているように思えます。

　それならば、デザイン側ももう少しディレクション側に歩み寄る努力をするべきです。 では、どのように歩み寄ればよいのでしょうか。

　マーケティングやビジネスに関する知識、情報設計にかかわる知識などは、あるに越したことはありません。しかし、それらに関して深い知識が必要かというと、必ずしもそうではありません。それがなにを指しているか、ぐらいは知っておいたほうがよい、という程度ではじめは大丈夫です。

　本来歩み寄るべきところは、「コミュニケーション」の部分です。

　先の例でも、デザイン側はただ待っているだけで、出てきたものに対してなぜこんなに出来がよくないのか、という具体的な理由も聞いていないということがありました。

　この意見交換は、上司や部下、先輩や後輩にかかわらず、対等にしたほうがいろいろな表現の幅が広がります。

　よくあるのは、上司が出した意見だからといって、それいまひとつ...と思う企画に意見できないこと。

　クライアントに対してとなると話はまた別ですが、社内のチーム内であれば、「それは古いですよ」「それはいまひとつおもしろくないです」など、言い切る勇気も必要です（ただし、言いっぱなしにならないよう、きちんと代替案を提案するようにしましょう）。

　また、ディレクション側からの意図をちゃんと理解しないまま、「とりあえずつくってみます」という状況に持っていくのは、危険です。

　先の例で、デザイナーが「使いづらい...」と思ったとして、そのままとりあえずつくってみなければならなくなってしまったら、デザイナーのモチベーションも上がりませんし、よい成果が期待できそうにもありません。きちんとその理由を聞くべきです。

　「なぜこんなに使いづらくなっているのですか？」という直球の質問ではなく、「なぜこのようにしようと思ったのですか？」という理由を、まず聞きましょう。

　理由を聞くことで、「なぜそうなったのか」という意図を知ることができます。そうすると、デザイナーは「その意図であれば、ユーザーのことを考えると、こうしたほうがいいですよ」ということを提案することができます。

　打ち合わせの最中に、デザイン側もいっしょに方向性を考えたり、ノートに実際に書いてみたりして、ちょっと違うと思ったことは気軽に声にするようにして、まずはコミュニケーションをとりましょう。

　ここでのポイントは、できるだけ否定的にならないことです。

　協力的な姿勢であれば、ディレクション側もある程度の受け入れ体制を整えてくれるはずです。