スキルアップ
2015年4月6日
とっさに振られてもイイ話ができる「とりあえずエピソード話法」
[連載]
「おもしろい人」の会話の公式【3】
文・吉田照幸
「あまちゃん」「サラリーマンNEO」、「となりのシムラ」の監督・吉田照幸 氏が2月に刊行した『おもしろい人の会話の公式』から、日常会話でのちょっとしたコツを全3回で紹介する本連載。最終回となる今回は、急なフリでの会話法や、コンプレックスを武器にする方法を紹介しましょう。
イイ話の公式は「エピソード→まとめ」
3月~4月は人の出入りも多い季節ですが、歓送迎会や仕事の打ち上げなどで、いきなりスピーチを振られることもありますよね。
大抵は、「9か月にもわたるプロジェクトでしたが、熱心なみなさんのおかげで~」とか、「●●さんには感謝しています」とかいう話からはじめることが多いですが、それだとやはり通り一遍の話にしかなりません。
こういうときは、とりあえず、エピソードです。
なんでもいいので、この日の主題に関係することで、自分が一番記憶に残っているエピソードを話してみてください。
「途中で課長がため息をついているのを見て、このプロジェクトは大丈夫なんだろうかと、ひとしれず不安に思うこともありました」
「退職される●●さんは、いつも朝早く来ていて、仕事の成果よりも、なぜ毎日朝早く起きられるのか、ということが実は疑問に思っていました」
そして最後は、ベタで構いません。
「でも最後は、みなさんの力で成功できたと思います」
「退職されても、ご活躍を祈っております」
気持ちが伝わるスピーチのできあがりです。
多くの方は大抵、逆のことをしています。
「まとめ」→「エピソード」
というパターンだと話がしまりません。それを、
「エピソード」→「まとめ」
とするだけで、すぐにいい話になります。
誰にでも簡単にできるコツなので、ぜひ試してみてください。
「コンプレックス」が最大の武器になる
誰でもコンプレックスって持っていますよね。太っているとか、背が低いとか、目が小さいとか。でも、それこそが会話であなたの印象を高める最大の武器になるのです。
「愛されるハゲと愛されないハゲ」がいます。「愛されるデブと愛されないデブ」でもいいです。
たとえば、飲み会に行って、初対面で、明らかにカツラな人がいるとします。
でも、当人がそれについて触れなければ、誰一人それに突っ込めない。
みんなが気になったまま、緊張感が途切れないまま、場が進んでいきます。
一方、いきなり、
「いやー、みなさん気付いていると思うとカツラです!」
なんて言ってくれると、もう、いきなり愛されますよね。この人には何を言ってもいいんだ、というオープンな気持ちになれます。
たとえば、「どうせ自分は太っているから......」と自分を恥じて引いている人よりも、「俺太ってるけど、いっぱい食べるのが大好きでさ」なんて言われたほうが、明るい気もちになれるじゃないですか? むしろ健康的な感じすらすることもあると思います。
恥かしがったり隠されたりしていると、場が緊張するものなんです。
本人はコンプレックスだと思っているものを、思い切って言ってしまうことで、笑いになるし、その人の度量すら伝わります。
たとえば、何か勉強会に行ったものの、あまりにレベルが高くて「ちょっと場違いなところに来ちゃったかも」と思ったら、自己紹介で「初めて来ましたが、皆さんレベルが高くて、ムリして頑張ってます」くらいのことを言ったほうが、その後がラクですよね。
大切なことは、「相手に気をつかわせないこと」です。気をつかわせてばかりいる人は、やっぱり話しにくいじゃないですか。だったら、「カツラなのかどうなのか」と気を使わせてしまうより、言ってしまったほうが、みんながラクになれるし、好感度も上がるのです。
(了)
吉田照幸(よしだてるゆき)
1969年、福岡県生まれ、山口県育ち。1993年NHK入局。NHKエンタープライズ番組開発部エグゼクティブ・プロデューサー。ここ10年でもっともコントを制作している。「のど自慢」「小朝が参りました」などエンターテイメント系の番組を中心に活躍。40分間一人で舞台で場を持たせるなど前節の技を鍛えつつ、芸人さんにも「話が面白い」と評判になる。広島放送局を経て番組開発部移動後、2004年に「サラリーマンNEO」を企画、以後全シリーズの演出を担当。型破りな番組として人気を博す一方、タニタの社食、Google本社を日本のテレビ番組として初潜入、コントに日産のカルロス・ゴーン氏を引っ張り出すなど、話題となった。2011年には「劇場版サラリーマンNEO(笑)」の脚本・監督を務める。第35回・36回国際エミー賞コメディ部門ノミネート(日本では唯一)。2013年春からは、異例のレンタル移籍で、連続テレビ小説「あまちゃん」の演出を担当。現在、コント番組、コメディ、ドラマを制作中。
1969年、福岡県生まれ、山口県育ち。1993年NHK入局。NHKエンタープライズ番組開発部エグゼクティブ・プロデューサー。ここ10年でもっともコントを制作している。「のど自慢」「小朝が参りました」などエンターテイメント系の番組を中心に活躍。40分間一人で舞台で場を持たせるなど前節の技を鍛えつつ、芸人さんにも「話が面白い」と評判になる。広島放送局を経て番組開発部移動後、2004年に「サラリーマンNEO」を企画、以後全シリーズの演出を担当。型破りな番組として人気を博す一方、タニタの社食、Google本社を日本のテレビ番組として初潜入、コントに日産のカルロス・ゴーン氏を引っ張り出すなど、話題となった。2011年には「劇場版サラリーマンNEO(笑)」の脚本・監督を務める。第35回・36回国際エミー賞コメディ部門ノミネート(日本では唯一)。2013年春からは、異例のレンタル移籍で、連続テレビ小説「あまちゃん」の演出を担当。現在、コント番組、コメディ、ドラマを制作中。