ビジネス
2015年4月21日
「製造技術」は優れていても「製品技術」がない日本のメーカー
[連載]
日本のものづくりはMRJでよみがえる!【2】
文・杉山勝彦
日本製品の強みはどこにあるか――製品技術で劣る日本を直視する
改めて、日本の強みがどこにあるのかを考えてみる。
高付加価値の製品を生み出すためには、高い技術力が必要になることはもちろんなのだが、実は製造業における技術には2種類ある。
それは、「製品技術」と「製造技術」だ。
製品技術とは、製品の設計能力である。要素技術を組み合わせ、市場に求められる製品に仕上げていくことを指す。
一方の製造技術は、文字通り、製品を作る技術で、高精度の部品を造ったり、歩留まりの高い量産を行うといったことを指す。
「何を造るのか」が製品技術であり、「どう造るのか」が製造技術といい換えることもできるだろう。
「日本は製造技術に優れている」というと聞こえはよいのだが、絶望的なまでに日本には製品技術がない。
これに対して、米国が強いのは製品技術である。要素技術を組み合わせて、市場が求める製品を生み出すことに長けている。
この対比は、iPhoneを見ればよくわかる。iPhoneには、高解像度のイメージセンサーや極小のコンデンサーなど日本製の部品が多数使われている。主要部品のほとんどは日本製といっても過言ではない。しかし、そうした高精度の部品を組み合わせて、製品を設計したのはアップルである。
エレクトロニクス分野も含めて、日本が世界で勝てている製品技術といえるのは、NAND型のフラッシュメモリーくらいのものだろう。
自動車産業の勝ちパターンも将来的には陳腐化する?
それ以外の日本製品は、基本的に製造技術の高さによって成立している。高品質の素材を使って、高品質な部品を作る。高品質な部品を組み合わせるから、高品質な製品が作れる。これが高度経済成長期以来の日本の勝ちパターンであった。ただ、エレクトロニクス分野では、もはやこの勝ちパターンは通用しなくなっている。
先述したように、高品質であれば市場で売れるというわけでもなく、半導体の場合は品質のキャッチアップも行いやすいからだ。
自動車についても、日本製が優れていたのは製品技術ではなく、製造技術だ。徹底的に部品の品質管理を行い、元請けと下請けが一体となって部品を擦り合わせて、高品質な製品を生み出してきた。製品技術についていえば、自動車は世界のどこでも大した差はない。
日本車の場合は、製造技術による高品質を市場戦略として活用した点が成功の理由であろう。高品質であることをうまくブランド化し、グローバル市場に売り込むことができている。
しかし筆者は、日本の自動車産業の隆盛は現在がピークで、今後の成長性について懐疑を抱いている。このことについて詳しくは次回に譲る。
(了)
杉山勝彦(すぎやまかつひこ)
東京都生まれ。企業信用調査、市場調査を経験した後、証券アナリストに転身。以降ハイテクアナリストとして外資系、国内系証券会社を経験し、ほぼ製造業全般をカバー。この間、96年に株式会社武蔵情報開発を設立して中小企業支援の道に入り、長野県テクノ財団主宰の金属加工技術研究会の座長を務める。現在は証券アナリストとして取材、講演活動に従事する傍ら、80年代前半のNY駐在時代に嫌というほど飛行機に乗った経験から研究を始めた航空機産業に対する知識を生かし、中小企業支援NPO法人「大田ビジネス創造協議会(OBK)」をベースに、航空機部品を製造する中小企業の育成に取り組んでいる。
東京都生まれ。企業信用調査、市場調査を経験した後、証券アナリストに転身。以降ハイテクアナリストとして外資系、国内系証券会社を経験し、ほぼ製造業全般をカバー。この間、96年に株式会社武蔵情報開発を設立して中小企業支援の道に入り、長野県テクノ財団主宰の金属加工技術研究会の座長を務める。現在は証券アナリストとして取材、講演活動に従事する傍ら、80年代前半のNY駐在時代に嫌というほど飛行機に乗った経験から研究を始めた航空機産業に対する知識を生かし、中小企業支援NPO法人「大田ビジネス創造協議会(OBK)」をベースに、航空機部品を製造する中小企業の育成に取り組んでいる。