カルチャー
2015年4月28日
「ワンコインランチ」は体に毒!? 腸が元気になる昼食ベスト3
[連載] 病気を防ぐ「腸」の時間割【6】
文・藤田紘一郎
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50歳を過ぎると1日3食のお米が体の毒となる


 50歳を過ぎたら、お米を1日3回食べることは、体の毒になります。50歳を過ぎると、体は少量の糖質があれば、十分に機能できるようになるからです。

 それにもかかわらず、お米などの糖質をとり過ぎていると、体に多くの障害が生じます。その代表が糖尿病です。

 日本では、50歳を過ぎると糖尿病になる人がとても多くなります。糖尿病は、食べ物に含まれるブドウ糖を体がうまく活用できなくなることで起こります。ブドウ糖は、主食となる炭水化物や砂糖に大量に含まれます。

 生殖期にある30代までは、体はブドウ糖をエネルギーに変えて動く解糖系というエネルギー生成系をメインに動かして、主なエネルギーを得ています。そのため、30代までは炭水化物を少々多く食べても、さほど太ることはありません。

 しかし、更年期になったら、メインのエネルギー生成系を解糖系からミトコンドリア系へと意識してうつす必要があります。ミトコンドリア系は、酸素を使ってわずかな燃料でエネルギーを持続的につくれる高度な機能を持っています。

 しかし、解糖系が力強く稼働してしまうと、働きを乱され、酸素を活性酸素へと変換しやすくなってしまうのです。

 活性酸素は、がんや生活習慣病をはじめとするあらゆる病気の発生に関与している、とても毒性の強い物質です。50歳を過ぎて炭水化物をとり過ぎていると、体内にて活性酸素が充満した状態になり、老化がいっきに進みます。

 40代から主食の量を減らしていき、50歳を過ぎたらできるだけ控えましょう。
 炭水化物をとりたい場合は、昼食にとります。炭水化物の燃焼効率は11~13時にもっとも上昇することがわかっています。体がブドウ糖を燃焼させやすい時間帯が昼なのです。

 ここでちょっと立ち止まって考えてみましょう。
 先ほど、「食べたものが胃でとどまる時間は2~6時間」と私はいいました。

 ところが、ブドウ糖は違います。私たち人類は長い間、食べ物を満足に得られない時期を耐え忍びながら命をつないできました。人類が誕生してから約700万年間、1日3食、おなかいっぱい食べられるようになったのは、わずか数十年前のことです。

 飢餓を耐えぬいてきた人間の体は、体と脳のエネルギー源となるブドウ糖を優先して消化吸収するよう進化しました。

 ブドウ糖の吸収率のよい食品の場合、わずか30分間で血糖値は急上昇します。これは、30分でブドウ糖が吸収され、血液中に大量に流れ出したことを表しています。

 「炭水化物は昼食にとりましょう」というのは、昼はブドウ糖の燃焼効率がよいためです。
 ただし昼食であっても、50歳を過ぎたら解糖系をいっきに稼働させるような炭水化物をとると、ミトコンドリア系に障害を与えてしまいます。

 もっともよくないのは、白米や小麦粉、白砂糖など、食物繊維をそぎ落としてしまった白い炭水化物です。

 反対に食べてもよい炭水化物は、玄米や五穀米などの全粒穀物や、全粒粉でつくられたパン、十割そばなどです。食物繊維の豊富な穀類は消化吸収に時間がかかるため、血糖値を急上昇させません。

 また、良質の食物繊維をまとっているため、腸内細菌がエサを豊富に得られ、腸内環境を整えてくれるのです。ただし、食べ過ぎは禁物です。

 腸の健康を考えた昼食については、私の最新刊『病気を防ぐ「腸」の時間割』(SB新書)で解説していますので、ぜひご一読ください。

(了)





病気を防ぐ「腸」の時間割
老化は夜つくられる
藤田紘一郎 著



藤田紘一郎(ふじたこういちろう)
東京医科歯科大学名誉教授。昭和14年中国旧満州生まれ。三重県育ち。東京医科歯科大学医学部卒業。東京大学大学院にて寄生虫学を専攻。テキサス大学で研究後、金沢医科大学教授、長崎大学医学部教授を経て、昭和62年より東京医科歯科大学教授。専門は寄生虫学、熱帯医学、感染免疫学。日米医学協力会議のメンバーとして、マラリア、フィラリアなどの免疫研究の傍ら、「寄生虫体内のアレルゲンの発見」「ATLウイルスの伝染経路の発見」など多くの業績をあげる。日本寄生虫学会賞、講談社出版文化賞、日本文化振興会社会文化功労賞および国際文化栄誉賞受賞。著書に『笑うカイチュウ』(講談社)、『清潔はビョーキだ』(朝日新聞社)、『脳はバカ、腸はかしこい』(三五館)、『腸をダメにする習慣、鍛える習慣』『人の命は腸が9割』(以上、ワニブックス)、『体がよみがえる「長寿食」』(三笠書房)など多数。
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