カルチャー
2015年9月17日
「病気のデパート」から「超健康おたく」への道──断食道場体験記パート2
[連載] “レアメタル王”の世界裏読み・逆読み・斜め読み【2】
文・中村繁夫
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断食道場5日目「肥満を防ぐには体操と散歩が不可欠」


 パート1でも書いたが、断食の厳しさは空腹についてはすぐに慣れてくる。それよりも、時間が余って精神的な孤独に耐えることの方が実際には辛いのである。4日までは女房が付き合ってくれていたが、5日目には用事があって帰宅してしまった。仕方がないので1人部屋に移動になり、独り暮らしの療養が始まったのである。人参ジュースと生姜茶を頂くのも一人である。顔見知りになった患者さんはいるが、急に会話が弾む訳ではない。

 はじめは8日も滞在するのだから時間つぶしに小説でも書いてみようと思ったが、断食している間は集中力が散漫になるから執筆行為は向いてないことがすぐにわかった。そこで方針を変えて「自然の中で英気を養う」ことと「運動をする」ことにした。こんなチャンスはめったにないからだ。

ジオツアー

 5日目にもなると、何人かの顔見知りもできたので断食道場のイベントであるジオツアー(ピクニック)に行くことにした。約3時間の行程でジオガイドの方が伊豆半島(城ヶ崎)のジオツアーをアレンジしてくれるのだ。ジオツアーとは、地球科学(地理学や地質学)の専門家による解説を聴きながら、自然景観の仕組みや成り立ちを読み解くツアーだ。今回のジオガイドの方は地質学が専門の方で、伊豆の歴史的背景を研究している元商社マンOBであった。石油資源の探査が専門だったが、商社を辞めてから伊豆で第二の人生を陶芸で楽しんでおられるとのことだった。

 ジオツアーの歩く距離はそれ程ではないが、切り立った崖の周りを歩くので充分に楽しめた。さて、城ヶ崎の「門脇灯台」には何度か来たが「ぼら納屋」とか「砲台」に来たのは初めてである。ピクニックの途中には美味しそうな海産物料理の店があり、海鮮料理の写真を見るだけでお腹が鳴った。やはり視覚や嗅覚からの誘惑は5日も経つと辛いものである。

 断食の成功の秘訣は多少無理をしてでも外に出て身体を動かすことだが、我慢して全行程を歩いたので汗だくになって体重はまた1キロほど痩せた。

 こうしたジオツアー以外にも大室山に登ったり、一碧湖を一周回ったり、断食道場の隣にあるゴルフコースを散歩したり、伊東市にある美術館めぐりに参加したり、何しろ暇を持て余しているから、こうしたイベントにはみんな参加している。7泊8日の断食期間は長いのだが、気がついてみると毎日がけっこう忙しいのである。

 さて、話は断食に戻るが、断食を続けていると何となく口がムニャムニャするし、舌苔は完全にはなくならないし目ヤニも普段より多いしオシッコもさらに濃くなっている気もする。痰が出たり耳垂れが出たりする話は既に書いたが体内の余分な毒素や老廃物のデトックスがまだ続いているのだろう。

 毎日3回温泉に入り、サウナに入り、散歩して汗をかいているので汗が臭ったりすることはないが、まだ息は臭い。気になるので暇に任せて歯間ブラシで歯石を除去するので歯肉炎はまったく皆無である。歯の噛み合わせが悪かったりすることも無い。何しろ食べないのだから歯はいつも清潔で、暇だから歯磨きも何回もやっているので口内環境は向上しているはずだ。

 僕は毎月一回PMTCを受けているが、断食効果で歯が非常に綺麗になっている。PMTCとは歯科衛生士によるクリーニングだ。歯の健康が身体の健康の基礎なので歳を重ねても自分の歯が維持できるようにしたいものである。強い歯は健康のバロメーターといわれる意味が断食道場の経験を通じて分かった。まさに健康にとって「口は災いの元」なのである。





中国との付き合い方はベトナムに学べ
中村繁夫 著



【著者】中村繁夫(なかむらしげお)
京都府生まれ。大学院在学中に世界35カ国を放浪。専門商社の蝶理に入社し、以後30年間レアメタル部門で輸入買い付けを担当する。2004年、部門ごとMBOを実施し、日本初のレアメタル専門商社アドバンストマテリアルジャパンの代表取締役社長に就任する。「レアメタル王」として、世界102 カ国で数多くの交渉を経験するなかで、ベトナム人の交渉術が日本人に参考になることを説く。近著は、『中国との付き合い方はベトナムに学べ』(SBクリエイティブ)。
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