カルチャー
2015年9月17日
「病気のデパート」から「超健康おたく」への道──断食道場体験記パート2
[連載] “レアメタル王”の世界裏読み・逆読み・斜め読み【2】
文・中村繁夫
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断食道場最終日「前立腺癌と前立腺肥大の話」


最後のお別れの昼食

 いよいよ退院の日である。1週間前にも受けた石原ドクターの講義をもう一度聞いた。8日間の体験をしたうえでもう一度勉強したので断食療養の理論的背景がよく理解できた。講義の後はチョット早めの最後のお別れの昼食である。朝食は人参ジュース一杯だけだったが昼食は立派な和食ランチである。

 7日間の断食は固形物を食べていなかったので、8日振りのありがたい食事である。普段なら少なく感じるかもしれないが、断食の後は食べ切れないくらいの昼食であった。さて、問題は自宅に帰ってからの食事をどうするかである。 断食道場を卒業してからの食事と生活態度が重要である。今回の気持ちを忘れずに、断食以降の食生活に活かしたいと思っている。

 3年前から腰痛と肩こりがきつくなった原因は前立腺癌の治療に重粒子線を照射させてからである。放射線を2か月にわたって17回ほど前立腺に当てるということは臓器が放射能で被爆したわけだから身体に変調が起こらない訳はない。同時に前立腺も肥大してしまったのでおしっこの出が悪くなった。そんな最悪の状態では運動する気にもならない。

 知らず知らずに運動不足が常態化し、血流が悪くなりさらに悪循環が始まったのだ。つまり運動しないから身体はますます固くなる。固くなると何をするにも億劫になり、食事の後は横になる。身体の不具合を行きつけの病院に行って見てもらうとあれやこれやと対症療法で薬を調合してくれる。内科に行って、形成外科に行って、糖尿病科に見てもらい、泌尿器科にも見てもらう。気がついたら毎日飲まなければいけない薬は10種類近くになっていた。これではいけないと思い生活習慣を変えるために今回の断食道場に緊急入院したのだ。

(左)80.2キロ⇒(右)75.3キロ

 さて、「8日間の断食道場の最終結果」は以下の通りである。始めに報告した通り、結果は体重が80.2キロから75.3キロと約5キロの減量を達成した。BMIが29.3から27.5に改善し、血圧は、入院時の最低血圧85が70まで下がり、最高血圧は135から120まで下がった。これだけの改善がわずか8日間で達成できたことを信じろと言っても信じられないかも知れないが事実である。

 体重は75キロをなんとか切りたかったが、7日目からお粥を食べ始めたので、効率的な吸収が行われているので体重は落ちにくいようだ。まあ、今回は初めての体験で、たった8日間で5キロ近くの減量が出来たのだから良しとするしかない。それでも身体は軽くなったしストレッチ体操のおかげで体も少しは柔らかくなった。

 さて最大の問題は糖尿病である。朝一番の最終検診の食前血糖値は何と131であった。140は切っていると期待したが短期間でここまで改善するとは思わなかった。Hba1cも後1カ月の結果が出た時にはで大幅な改善(7.0以下)をすることを期待している。

 最終日には白い舌の色もピンク色に変わった。変な目やにも出ないし尿の匂いも臭くないし、前立腺肥大が直ってきたし、息が臭くなくなった。何事にしても何かを達成するというのは気持ちが良くて嬉しいものだ。

エピローグ「病気のデパート」の自分自身の棚卸が終了


 さて、8日間を振り返ってみて「病気のデパート」の自分自身の棚卸(たなおろし)が終了したわけである。これで「死の四重奏」が完全にリセットされたわけではないが、今後の健康への方向性が示されたことはありがたいことである。

 私は無茶苦茶な生活を続けてきたわりにはサラリーマン生活の後半から「奇妙な健康オタク」に変身したことと、今回の断食経験とを関連付けて考えてみた。年がら年中、最悪の生活習慣病を引きずって来た自分が「奇妙な健康オタク」に興味を抱きさらに「断食修行」にまでたどり着いたのは偶然ではないと思っている。

 50歳を過ぎてから新会社を設立して経営者になってからは健康に対する責任感のようなものが芽生えてきた気がする。それは、ステークホルダーに対するある種の使命感を持ったからである。その後も「病気のデパート」と呼ばれてはいたが新たな病気が見つかるごとに主治医に相談して徹底的に治すように努力をした。

石原ドクター(右)と、筆者

 前立腺癌については高額医療を惜しげもなく受けたし、癌体質にならない高額医療の免疫治療も受けている。体調がすぐれない時には月に何回か会社の近くの内科の先生が推薦しているニンニク注射と強力ネオミノファーゲンC注射やプラセンタ注射も欠かさず投与している。そんな健康オタクの私が簡単に克服できないのが生活習慣病といわれるメタボリックシンドロームであった。

 まさに商社マンの平均寿命を超えた年齢からどんな小さな変調も馬鹿にせず手を打ってきている。今回の断食入院についても「まず何でもやってみる」ことからスタートした。結果はすでに報告した通りであるが、心身ともに健康な状態を維持する事には終わりのない常日頃からの努力が必要である。私自身の健康は自分だけではなく家族や会社の仲間や全てのステークホルダーに対する責任と使命感が基礎になる。たった8日間の経験で結論と云えるものを導き出すことは難しいが何もしないよりもまだマシであるはずだ。そして健康との闘いは実は今から始まるという事も強調しておかねばならない。

 こんな些細な経験の報告が読者の方の参考になれば望外の喜びである。

※本記事は、ウェブマガジン「WEDGE Infinity」掲載の連載記事を再編集したものです。
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中国との付き合い方はベトナムに学べ
中村繁夫 著



【著者】中村繁夫(なかむらしげお)
京都府生まれ。大学院在学中に世界35カ国を放浪。専門商社の蝶理に入社し、以後30年間レアメタル部門で輸入買い付けを担当する。2004年、部門ごとMBOを実施し、日本初のレアメタル専門商社アドバンストマテリアルジャパンの代表取締役社長に就任する。「レアメタル王」として、世界102 カ国で数多くの交渉を経験するなかで、ベトナム人の交渉術が日本人に参考になることを説く。近著は、『中国との付き合い方はベトナムに学べ』(SBクリエイティブ)。
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