カルチャー
2015年9月17日
「病気のデパート」から「超健康おたく」への道──断食道場体験記パート2
[連載] “レアメタル王”の世界裏読み・逆読み・斜め読み【2】
文・中村繁夫
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断食道場7日目「糖尿病と高血圧とのお付き合い」


 7日目は朝から体操教室に参加した。ストレッチ体操が中心なのだが、回りを見渡しても私ほど体がガチガチに堅い人は居ない。サラリーマンの運動といえばゴルフぐらいだが私の場合は通勤と犬の散歩以外にはこれといった運動はしていない。お医者さんから「最低でも一万歩を歩きなさい」といわれて万歩計と体重計を連動させてコンピューター管理をしばらく続けたが手間がかかるので長続きはしなかった。

人参ジュースと生姜茶

 石原ドクターによれば人参ジュースと生姜茶だけでなく体操と筋肉増強を実行することが重要だとの指導を受けた。体が柔らかくなれば腰痛や肩こりは自然に治ると聞いて壁に向って腕立て伏せをし始めた。昔は床に向って腕立て伏せをしても50回以上は出来たが今は何と情けないことに10回すら出来ないのだ。これじゃ少しずつ筋肉をつけて行くしかない。もう一つは腹筋運動である。こちらも昔は軽く50回以上はできたのが今は10回がギリギリである。

 さらに問題は身体の柔軟性が無くなってきたことだ。昔から体は柔らかくはなかったが股関節や膝もガチガチである。三浦雄一郎さんでも少しずつ体を慣らしていったというから自分にとってもこまめな運動が必要だ。断食道場では体操の先生が30分ぐらいのストレッチ教室を開いてくれた。何回か参加させてもらったがこれだけ身体が鈍っているとは思いもしなかった。退院してからも気がついた時には柔軟体操と筋肉運動を欠かさずやることにしている。

 7日目は朝早くから温泉とサウナが3回ずつ、午後からジオガイドさんの宅にお邪魔して陶胎漆器の見学をした。道場に戻りもう一度サウナで汗を流してから生姜湯パックで身体を温めた。驚くほどの汗が沸いてくるから信じられない。人参ジュース摂取の後、石原ドクターから4日目のHbA1cの結果が良好と報告あったが、お陰様でさらに改善している。

 夜は出来るだけ読書と執筆にあてているが、寝る前に脂肪の燃焼を推進するためのマッサージを60分やってみた。有害物質は、脂肪に蓄積しやすいという性質があるらしい。断食中は脂肪の燃焼率が飛躍的に高まり、脂肪と結合していた有害物質が遊離し、血液中に放出され、肝臓を通じて腸に送られ、最終的に体外への排泄が促される。人によっては背中や下半身に大量の蕁麻疹が出現することがあるが、これは好転反応によるもので、体内から毒素が排出された証拠である。幸いにして私の場合は蕁麻疹はでてはいない。体重は7日目にして75キロ台に突入した。BMIは27.4まで下がった。

玄米の重湯

 さあこれからだと思い、74キロ台に挑戦しようと思ったら「中村さん、今日からは玄米の重湯です」といわれた。いよいよ8日目が退院だから補食期間にはいるのだ。嬉しいような名残り惜しいような気がする。

 「今日の夕食は最後の晩餐」明日はいよいよ出所である。囚人の気持ちが判る。一緒に入門(収監された)した同期の仲間も同じテーブルで最後の晩餐を頂く。思わずお互いに笑いというか笑みがこぼれる。7日間も固形物を摂ってないので晩餐の美味いことこの上ない。

 まず、「しらす大根おろし」に醤油をかけて食べる。美味い。次に玄米のおも湯に胡麻塩をかけて食べる。美味い。次に蟹の味噌汁の蟹の殻を啜る。美味い。最後に梅干を生姜茶に浸けながらしがむ。美味い。縮んだ胃袋に食べ物を一気に入れると危険だから少しずつ味わいながら食べなければならないのだ。こうして、お務めが終われば素直な心で「断食の意味」を考えてみたくなってくる。

 断食の主な目的は3つある。

(1)心臓以外のすべての臓器を休めることである。
(2)体内の毒素を排出することである。
(3)考えるのをやめて左脳を休めることである。

 ダイエットは目的ではなく手段の一つでありデトックスを進めて臓器と左脳を休めることが心身をリセットすることなのである。






中国との付き合い方はベトナムに学べ
中村繁夫 著



【著者】中村繁夫(なかむらしげお)
京都府生まれ。大学院在学中に世界35カ国を放浪。専門商社の蝶理に入社し、以後30年間レアメタル部門で輸入買い付けを担当する。2004年、部門ごとMBOを実施し、日本初のレアメタル専門商社アドバンストマテリアルジャパンの代表取締役社長に就任する。「レアメタル王」として、世界102 カ国で数多くの交渉を経験するなかで、ベトナム人の交渉術が日本人に参考になることを説く。近著は、『中国との付き合い方はベトナムに学べ』(SBクリエイティブ)。
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