スキルアップ
2014年6月30日
なぜ人はゲームにハマるのか【補講2】パズル&ドラゴンズ
[連載] なぜ人はゲームにハマるのか【補講2】
文・渡辺 修司/中村 彰憲
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⑧''ダンジョンへの連続挑戦(素材あつめ)、⑪モンスター強化、⑫モンスター強化



 モンスターを強化するためには、その素材となるモンスターやコインなど複数の要素が必要であり、これを目的にダンジョンを冒険することになります。

 また不必要なモンスターは、合成や進化合成の素材として利用することで整理することもできます。

⑬パーティーの進化


 ここで図がさらに大きくなってしまうので、別図にしました。

 先までのルド・ストラクチャー「⑬パーティーの強化」を内包する構造です。


⑭挑戦枠の拡大  プレイヤー自身のランクをあげることで、スタミナやコスト、フレンド枠の最大値があがります。

 プレイヤーランクは、モンスターのパーティー制限を拡大する効果と、お助けモンスターの利用状況の改善させるルドだといえます。

 実際にフレンド枠が広がった場合、その枠により強力なフレンドを登録したいと考えて、自分自身で友人などに直接パズドラを話を持ちかける必要もあります。つまり、現実世界において、ゲーム自体の伝搬性を導くルドといえます。

⑩モンスターコンプリート  最終的なルドとしては、モンスターコンプリートのルドが設計されているといえます。

 コンプリートとは、すべて集めることですが、実際には、本作は、実際に多くのユーザーが無課金の範囲でプレイしているという事実もあり、この効率予測を考えるユーザーは少ないと思われます。

 しかしながらコンプリートに近づくように、より多く、より強いモンスターを集めるという方向性がデザインされているという点は間違いないでしょう。

 この点で古くから存在する、"カードゲーム"のモデルは極めてよく似ています。

 従来の家庭用ゲーム機におけるゲームでは、ゲームのクリア(ストーリーとしてのクリア)が比較的上位に存在するルドといえます。

 しかし、特にネットワークゲームの時代になり、ゲームのクリアは、ルドをもたらすための演出の一つでしかなく、クリアを実装いかんにかかわらずプレイヤーの没入状態を作り出し、何度もルドを繰り返させることができるゲームが増えてきました。

 パズドラもその系譜の一つであり、従来型のRPGのようにストーリーを伝えるナレームを重視するのではなく、カードゲーム型のルドやルドナレームを基本に構成されているといえます。これは、パズドラの解説で最初に示した、紹介文で示したナレームとルドナレームから始まり、ここで紹介したルド・ストラクチャーまで徹底して統一されている構造といえます。

 パズドラのルド・ストラクチャーの解説の最後に、魔法石への誘導のバランスに言及したいと思います。

 ここまでで見てきたように、パズドラでは、モンスター収集、ダンジョンの継続、スタミナの回復などを、"魔法石"によって行うことができます。また、魔法石は課金のみで賄えるわけではなく、ゲーム内でも入手することもできます。

 これらの点も踏まて、本作のルド・ストラクチャーにおいて、魔法石のバランスの意味を考察すると「難易度が下がる。(挑戦の時間が短くてすむ)」というバランスを導くようにルド・ストラクチャや個別のルドで用いられているということがわかります。

 つまり、プレイヤーの"効率予測のバランス範囲内"に収めて「使った方が効率的」と思わせるようにデザインされています。

 これは、"課金"という現実世界の行為を誘導するべく、プレイヤーに効率予測を発生させるるため、ルド・ストラクチャーを構築しつつ、"課金"が発生しても、全体のバランスが崩れないようにデザインされているということです。

 もし、このバランスがとれていないと「課金しないとおもしろくない」、または「課金の必要がない」というつまり、バランスの飽和や不足が発生するデザインになってしまいます。

 ここまでパズドラにおけるのルド・ストラクチャーを解説してきました。

 しかしながら、最も上の階層として示した⑩モンスターコンプリートは、あくまで解説上の区切りとして、ここで終えただけであり、この上階層には現実世界との境界があります。

 日常生活を送る中で、新たなダンジョンやスタミナの回復、フレンドからの協力などを期待して、このゲームのルドに舞い戻ってくるという構造があり、本作は、"課金"のみならず、あらゆる段階において、現実世界との境界とルドが密接にかかわったデザインが構築されているといえるでしょう。

(了)
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なぜ人はゲームにハマるのか
開発現場から得た「ゲーム性」の本質
渡辺 修司、中村 彰憲 著



【著者】渡辺 修司(わたなべ しゅうじ)
2007年より大学の教鞭をとり、2010年度より正式に立命館大学映像学部准教授に専任。現職 日本デジタルゲーム学会研究委員、立命館大学ゲーム研究センター運営委員。1997 年 「FinalFantasy7 international」(株式会社スクウェア) でゲーム業界に参加後、多数の会社で企画・監督職として参加。代表作は、2008年「internet Adventure」(株式会社セガ) 原案・企画監修。2004年 エンターブレイン主催 第1回ゲーム甲子園 大賞受賞 「みんなの城」個人作品、2003年 メディア芸術祭審査員推薦作品 「ガラクタ名作劇場 ラクガキ王国」(株式会社タイトー 2003年)、原案・監督職

【著者】中村彰憲(なかむら あきのり)
立命館大学映像学部教授、日本デジタルゲーム学会副会長、立命館ゲーム研究センター運営委員。名古屋大学大学院国際開発研究科博士課程後期修了後、早稲田大学アジア太平洋研究センター助手、立命館大学政策科学部助教授を経て現職。東京ゲームショウアジアビジネスフォーラムアドバイザー(2010ー2011)、太秦戦国祭り実行委員会委員長(2009-2012)などを歴任。主な著書に、「デジタルゲームの教科書」(SBクリエイティブ、アジア市場を担当)、「ファミコンとその時代」(NTT出版、上村雅之氏、細井浩一氏と共著)、「テンセント VS. Facebook」、「グローバルゲームビジネス徹底研究」、「中国ゲームビジネス徹底研究」シリーズ(全てエンターブレイン)など多数。「ファミ通ゲーム白書」においては創刊以来、一貫して中国及び新興市場を担当する。最近は、GPS機能を活用したゲーム的アプリ開発のプロジェクトにも参画し、GDC2012でも講演。博士(学術)。
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