カルチャー
2014年9月2日
無理して笑うとかえってストレスがたまる!?
[連載]
「いい人」をやめると病気にならない【4】
文・帯津良一
笑えばいいってもんじゃない! ときめきの笑いが免疫力を上げる
近年、「笑いの効用」が、医療の場でも注目されるようになりました。笑うと免疫力がアップするからです。笑い療法というものがあるくらいです。
代表的な例としては、アメリカの医療ジャーナリスト、ノーマン・カズンズ氏が、笑うことで自らの膠原病と心筋梗塞を克服しました。日本では、岡山県にあるすばるクリニックの伊丹仁朗先生がこの笑いの療法を参考にし、「生きがい療法」を提唱しました。
生きがい療法の基本は「笑い」で、伊丹先生の病院では患者さんが集まり、交代で面白い話をして大声で笑い合う、といったことが行われていたのです。
この実験によって集められたデータによると、大笑いすることでがん細胞やウイルス感染細胞を攻撃するNK細胞が著しく活性化していたのです。
このように笑いの効用は大きいため、私の患者さんでも、鏡を見て無理して笑うようにしていた患者さんがいたくらいです。
確かに、笑うとときめくので、NK細胞などの免疫細胞が活性化し、がん細胞などの悪玉細胞を攻撃してくれます。ところが、無理して笑ってもときめくことはなく、かえってストレスをためてしまうことがわかってきたのです。
いい人ほど、笑いの効用を得ようと、無理してでも笑うよう心がける人は多いでしょうが、これでは本末転倒になってしまいます。
作家の五木寛之さんとの対談で、笑いについての話になったことがありました。五木さんは「なあ帯津さん、笑えばいいってもんじゃないよな」と言っていました。ちょいワルで、このことに気づいている人は多いでしょう。
私も五木さんと同感で、心から笑わなければ意味がない、と思っています。これは、人間の本性は哀しみにあり、人間は明るく前向きにはできていないからです。
私は以前、気功によって生命場のエネルギーが高まることを証明できないか、といろいろと考えたことがありました。そして、行き着いたのが、血液中のセロトニン値、乳酸・ピルビン酸比、アルドステロン値の三つを測定することでした。
生理活性物質の一つであるセロトニンが上昇すると、生命力のようなものが上昇します。また、乳酸・ピルビン酸比の下降は、疲労回復を意味し、アルドステロン値が上昇すれば、適度な緊張が生まれます。
つまり、セロトニン値が上昇し、乳酸・ピルビン酸比が下降し、アルドステロン値が上昇すれば、生命場のエネルギーが高まる、という仮説を立ててみたのです。
結果は私の予期したとおりでした。熟練者ほど、この傾向が見られたのです。
別の機会に、大笑いをした前後でも測定してみたのですが、結果は気功の場合と同じでした。あくまでも私の立てた仮説ですが、気功もときめきの笑いも、免疫力を高める効果はあると思います。
しけた顔をするな! いい人相が人を幸せにする
心の状態は、必ず表情に出ます。ですから、苦虫をかみ潰したようなしけた顔をしていると、周りの人が近寄りがたくなります。いい人ほど、人間関係を窮屈に考える傾向があるため、気をつけなければなりません。
といっても、無理に笑顔をつくったり、無理に笑ったりする必要はありません。不自然な表情になるだけだからです。接したい顔というのは、穏やかで、どこかのんびりした表情と私は考えています。柔和な表情は人を和ませ、ホッとさせてくれるものです。
つまり、いい人相は、人を幸せな気持ちにしてくれるのです。いい人相を心がけるだけでも、相手に与える印象は違ってきます。ちょいワルの人望が厚い人のも、人相がいいのが大きな理由の一つとなっています。
「目は口ほどに物を言う」と言われるように、人相を左右するのが目で、目の輝きが大切となってきます。目が品性をも映し出す、といっても過言ではありません。
目を輝かせるのに有効なのは、ときめくことです。青雲の志を抱いている人は、目が輝いています。命のエネルギーがみなぎっていると、人相がよくなってくるのです。
「人相のいい人は免疫機能も高い」と言ったのは、免疫学が専門の久留米大学名誉教授、横山三男先生です。ビジネスの世界でも「人は見た目で決まる」と言われているみたいですが、免疫機能に関しても、見た目が重要となってくるのです。
(第4回・了)
【著者】帯津良一(おびつりょういち)
1936年埼玉県生まれ。医学博士。1961年、東京大学医学部卒業。東京大学医学部第三外科、共立蒲原総合病院外科、都立駒込病院外科医長などを経て、1982年、埼玉県川越市に帯津三敬病院を開設、院長となる。現在、同病院名誉院長、帯津三敬塾クリニック主宰。人間を「有機的総合体」と捉え、西洋医学のみならず伝統医学・民間療法等を体系的に組み合わせて患者自身の自然治癒力を引き出す、「ホリスティック医学」を実践する。全国での講演回数も多く、「長生きにはトキメキが大事」と心・食・気の養生を勧め、聴衆の人気を博している。 現在、日本ホリスティック医学協会理事長、日本ホメオパシー医学会理事長、埼玉大学講師、上海中医薬大学客員教授なども務める。著書に『長生きしたければ朝3時に起きなさい』(海竜社)、『ホリスティック医学入門』(角川oneテーマ21)、共著に『なぜ「粗食」が体にいいのか』(幕内秀夫との共著、三笠書房)、『健康問答』(五木寛之との共著、平凡社)など多数ある。近著は『人生に必要なものは、実は驚くほど少ない』(共著:やましたひでこ、集英社)、『「いい人」をやめると病気にならない』(SB新書)。
1936年埼玉県生まれ。医学博士。1961年、東京大学医学部卒業。東京大学医学部第三外科、共立蒲原総合病院外科、都立駒込病院外科医長などを経て、1982年、埼玉県川越市に帯津三敬病院を開設、院長となる。現在、同病院名誉院長、帯津三敬塾クリニック主宰。人間を「有機的総合体」と捉え、西洋医学のみならず伝統医学・民間療法等を体系的に組み合わせて患者自身の自然治癒力を引き出す、「ホリスティック医学」を実践する。全国での講演回数も多く、「長生きにはトキメキが大事」と心・食・気の養生を勧め、聴衆の人気を博している。 現在、日本ホリスティック医学協会理事長、日本ホメオパシー医学会理事長、埼玉大学講師、上海中医薬大学客員教授なども務める。著書に『長生きしたければ朝3時に起きなさい』(海竜社)、『ホリスティック医学入門』(角川oneテーマ21)、共著に『なぜ「粗食」が体にいいのか』(幕内秀夫との共著、三笠書房)、『健康問答』(五木寛之との共著、平凡社)など多数ある。近著は『人生に必要なものは、実は驚くほど少ない』(共著:やましたひでこ、集英社)、『「いい人」をやめると病気にならない』(SB新書)。