カルチャー
2014年9月8日
イチロー選手に学ぶ、ときめきの偏食のススメ
[連載]
「いい人」をやめると病気にならない【5】
文・帯津良一
ときめきの食事を楽しむことが自然治癒力を高める
健康な日々を送るには、食事が重要となってきますが、最近の日本人は食事に対して神経質になりすぎです。健康のために何を食べればいいのか、何を食べたらダメなのかばかり考えています。
肉や油っこい食べ物だけでなく、塩分や糖分まで病気の素のように考えている人は少なくありません。これではせっかくのおいしい食事も台なしで、食べられるものが制限されてしまいます。
肉や塩分、糖分は摂りすぎるのがよくないだけで、適度に摂る分には栄養になるのです。油っこい食べ物もときめくのであれば、たまには食べたほうがいいのです。
食事は栄養補給によって、健康を維持するのが目的なだけではありません。体内の自然治癒力を高める効果もあるのです。
特にときめきの食事は自然治癒力を爆発的に高めてくれます。疲れがたまったときに精のつくものを食べれば元気になるのは、この自然治癒力が高まるからです。サプリメントを摂取するより、精のつく食事を摂るほうが元気になるように感じられるのは、それだけ食べ物のエネルギーが高いからです。
健康のために菜食主義で、肉や魚は一切口にしない、というのは、自然治癒力を放棄するようなもの、といっても過言ではありません。
野菜をたくさん摂るとがんの予防になる、と言われていますが、私の場合、野菜はほとんど食べません。里芋やじゃがいもの煮っ転がし、漬物は好きですが、生野菜は全く食べません。
長い間、偏食を続けていると病気になる、と多くの人が思っていますが、これもエビデンスがあるわけではないのです。自然治癒力のことを考えると、「食事を楽しみ、おいしく食べる」の精神を優先させたほうが、健康な生活が送れるのです。
偏食の人と言えば、長年メジャーリーグで活躍しているイチロー選手も、野菜を食べることはほとんどないみたいです。朝食に奥さまが作るカレーが何年も続いたこともあったみたいで、かなりの偏食家と言ってもいいでしょう。
ところが、イチロー選手は数々の記録を塗り替えているだけでなく、病気やケガが少ないことでも知られています。ときめきの食事の重要性を知っているからこそ、偏食でも健康を維持できる代表的な人と言えます。
いい人で、食事の栄養面ばかりに目が行く人は多いのですが、ときめきの食事の重要性も忘れてはなりません。一方、ちょいワルは健康をまじめに考えすぎないため、食事を楽しむ人は結構います。
ときめきの食事をするときは、品質のいいものを適度に摂るといいでしょう。そのほうが、ときめきの度合いがさらに高くなり、自然治癒力も高まります。
50歳以降の人ほど、「肉食」が健康につながる
健康に関心のある人のなかで、「肉は身体に悪い」と言う人は結構います。「大腸がんの原因になる」「コレステロール値が高くなる」というのが主な原因でしょう。ところが、高齢で活躍している人で、肉好きな人は少なくありません。
たとえば、著名人では、100歳を超えても現役の医師である日野原重明先生(聖路加国際病院名誉院長)は、ステーキ好きで知られています。作家で天台宗の尼僧の瀬戸内寂聴さんも、よく肉を食べられるみたいです。
私も谷中にある行き付けのお蕎麦屋さんで食べるカツ丼が大好きで、ときめきの一つになっているくらいです。
肉が問題視されるのは、摂りすぎることによって、病気の原因となり得る動物性脂肪も摂りすぎてしまうからです。適度に肉を摂る必要があるのは、肉に含まれるたんぱく質と脂肪が、三大栄養素のうちの2つを占めていることからも明らかです。
また、肉を食べると、身体に必要なアミノ酸が補われるため、血管が丈夫になり、脳卒中、動脈硬化、高血圧症、心筋梗塞などのリスクが軽減されます。
特に50歳以降になると、適度に肉を摂る必要があります。これは、老化とともに身体からたんぱく質と脂質が減っていくからです。
たんぱく質が減れば筋肉や骨の量が減り、将来寝たきりになる確率が高くなります。また、脂質が減れば身体の細胞膜が弱り、病気になりやすくなるのです。
ただし、肉を摂るときは上等なものを摂るようにしてください。ときめきながら食べることによって、より効果が高くなるからです。
(第5回・了)
【著者】帯津良一(おびつりょういち)
1936年埼玉県生まれ。医学博士。1961年、東京大学医学部卒業。東京大学医学部第三外科、共立蒲原総合病院外科、都立駒込病院外科医長などを経て、1982年、埼玉県川越市に帯津三敬病院を開設、院長となる。現在、同病院名誉院長、帯津三敬塾クリニック主宰。人間を「有機的総合体」と捉え、西洋医学のみならず伝統医学・民間療法等を体系的に組み合わせて患者自身の自然治癒力を引き出す、「ホリスティック医学」を実践する。全国での講演回数も多く、「長生きにはトキメキが大事」と心・食・気の養生を勧め、聴衆の人気を博している。 現在、日本ホリスティック医学協会理事長、日本ホメオパシー医学会理事長、埼玉大学講師、上海中医薬大学客員教授なども務める。著書に『長生きしたければ朝3時に起きなさい』(海竜社)、『ホリスティック医学入門』(角川oneテーマ21)、共著に『なぜ「粗食」が体にいいのか』(幕内秀夫との共著、三笠書房)、『健康問答』(五木寛之との共著、平凡社)など多数ある。近著は『人生に必要なものは、実は驚くほど少ない』(共著:やましたひでこ、集英社)、『「いい人」をやめると病気にならない』(SB新書)。
1936年埼玉県生まれ。医学博士。1961年、東京大学医学部卒業。東京大学医学部第三外科、共立蒲原総合病院外科、都立駒込病院外科医長などを経て、1982年、埼玉県川越市に帯津三敬病院を開設、院長となる。現在、同病院名誉院長、帯津三敬塾クリニック主宰。人間を「有機的総合体」と捉え、西洋医学のみならず伝統医学・民間療法等を体系的に組み合わせて患者自身の自然治癒力を引き出す、「ホリスティック医学」を実践する。全国での講演回数も多く、「長生きにはトキメキが大事」と心・食・気の養生を勧め、聴衆の人気を博している。 現在、日本ホリスティック医学協会理事長、日本ホメオパシー医学会理事長、埼玉大学講師、上海中医薬大学客員教授なども務める。著書に『長生きしたければ朝3時に起きなさい』(海竜社)、『ホリスティック医学入門』(角川oneテーマ21)、共著に『なぜ「粗食」が体にいいのか』(幕内秀夫との共著、三笠書房)、『健康問答』(五木寛之との共著、平凡社)など多数ある。近著は『人生に必要なものは、実は驚くほど少ない』(共著:やましたひでこ、集英社)、『「いい人」をやめると病気にならない』(SB新書)。