カルチャー
2015年8月26日
果汁100%の「濃縮還元」と「ストレート」、選ぶならどっち?――添加物や糖尿病の危険性を知っておこう
[連載]
体を壊す食品「ゼロ」表示の罠【3】
文・永田 孝行
みんなが知らない「果汁100%」ジュースのつくられ方
市販のジュースには、原材料名として「濃縮還元果汁」と表示されている商品がたくさんあります。こうしたジュースの実態は、野菜や果肉の濃縮ペーストに水を加えて、ドリンクとして飲めるように戻したもの。これがいわゆる「濃縮還元果汁」です。
濃縮ペーストは、野菜や果肉を低温沸騰と呼ばれる方法で1/6程度に煮詰めてつくられます。このドロドロとしたペーストを冷凍すれば、容積を小さくして運べるので、低コストで大量に運搬できるといった大きな利点があります。そのため、今日では濃縮還元の製法が一般的になっているのです。
ちなみに、濃縮ペーストの多くは輸入品に頼っているのが実情なのですが、輸入後に日本で水を加えて戻せば「国産」と表示ができます。
利点がある一方、濃縮ペーストにした場合、香りが損なわれるほか、ビタミンCや酵素が壊れたり、栄養素が失われたりするデメリットも生じます。また、濃縮ペーストは飲みやすくするために、食物繊維も除去されています。
こうした欠点を補うために、香料やビタミンCなど、さまざまな添加物が必要となってくるのです。もし、栄養成分表示をチェックして、ビタミンCが含まれているとすれば、それは栄養強化と変色防止のためにビタミンCが後から添加されたもの。原材料の果汁に含まれるビタミンCではありません。
さて、さまざまな香料をプロの手で組み合わせれば、あらゆる香りをつけることができます。たとえば、イチゴ香料は酪酸エチル、乳酸エチル、リナロール、アセトフェノンなど20種類以上を混ぜ合わせてつくられますが、どれだけ使っても表示は「香料」と記すだけでかまわないのです。
「果汁100%」かどうかはパッケージでも判断できる
同じように果汁「100%」と書かれていても、濃縮還元果汁とストレース果汁では、味わいがまったく異なります。ストレート果汁は、その名のとおり果汁を搾って殺菌してから詰めたもの。濃縮して還元する工程がいらない分だけ、果汁そのものに近い風味を堪能できます。
もっとも、ストレート果汁の場合も加熱殺菌が行われているので、熱に弱い栄養素は、濃縮還元果汁と同様に失われている点では共通しています。
健康志向が高まるなか、野菜ジュースや、野菜や果物をブレンドした果汁100%ジュースが人気を呼んでいますが、「これで野菜や果物の栄養素は十分に摂れているから安心だ!」と考えるのは早計です。
栄養がないわけではありませんが、野菜代わり、果物代わりにはなりません。あくまでも補助的な位置づけとして飲むのが賢明だといえるでしょう。
永田孝行(ながた・たかゆき)
1958年愛知県名古屋市生まれ。東京大学大学院医学系研究科で肥満と代謝を研究。 生活習慣病予防と改善の為の食事療法としてGI値 (グリセミック・インデックス) に着目して実験・研究を重ねた後、2001年に「低インシュリンダイエット」を提唱し、ブームを巻き起こす。また2003年には特異的な体脂肪分解のメカニズムを解明し、部分痩せを可能にする著書『10 days ポイントダイエット』を国内外で出版。これまで60冊近くを出版し、書籍販売総数は500万部を突破。主な活動としては健康保険組合や企業を通して社員の健康・保健指導や生活習慣病予防と改善対策における食品の研究開発、健康コンサルタント、さらには講演活動や雑誌の指導・監修、テレビ、ラジオ、新聞などの取材も多数受けている。主な著書に『低インシュリンダイエット』(新星出版社)、『なんで太るの?』(角川書店)など。
1958年愛知県名古屋市生まれ。東京大学大学院医学系研究科で肥満と代謝を研究。 生活習慣病予防と改善の為の食事療法としてGI値 (グリセミック・インデックス) に着目して実験・研究を重ねた後、2001年に「低インシュリンダイエット」を提唱し、ブームを巻き起こす。また2003年には特異的な体脂肪分解のメカニズムを解明し、部分痩せを可能にする著書『10 days ポイントダイエット』を国内外で出版。これまで60冊近くを出版し、書籍販売総数は500万部を突破。主な活動としては健康保険組合や企業を通して社員の健康・保健指導や生活習慣病予防と改善対策における食品の研究開発、健康コンサルタント、さらには講演活動や雑誌の指導・監修、テレビ、ラジオ、新聞などの取材も多数受けている。主な著書に『低インシュリンダイエット』(新星出版社)、『なんで太るの?』(角川書店)など。