カルチャー
2016年4月28日
新しい働き方の最重要キーワード「エイジフリー」とは?
[連載] 自分の半径5mから日本の未来と働き方を考えてみよう【8】
定年制の廃止で労働の健全な流動化が進む
  • はてなブックマークに追加

少子化、老老介護、孤独死、待機児童問題など、数多くの難題を抱え「課題先進国」となってしまった日本。こうした混迷の時代でも、自分の半径5mの世界から変えていくことが結局は早く世界を変えることにつながる。日本の未来と、今後の私たちの働き方について、出口治明 氏と島澤諭 氏に語っていただく好評連載8回目!(出典:『自分の半径5mから日本の未来と働き方を考えてみよう会議』)


エイジフリーで働きたい人がいつまでも働ける社会が実現する!


出口 この国の一番の課題は高齢化対策です。安倍首相も「一億総活躍社会」に向けて介護離職ゼロの実現を目標に掲げています。では、介護とは何かと言えば「平均寿命マイナス健康寿命」です(健康寿命とは分かりやすく言えば、一人でご飯が食べられ一人でトイレに行ける状態を指します)。介護を減らそうとすれば平均寿命を延びないようにするか(これは実施不可能な政策です)、健康寿命を延ばすしか他に方法はありません。僕は健康寿命を延ばすことがとても大事だと思っています。
 もう少し詳しく実際の数字をみてみましょう。厚生労働省の発表によると、2013年の日本人の健康寿命は男性が71.19歳、女性は74.21歳で2010年から少し伸びています。2014年の平均寿命は男性80.5歳、女性86.83歳です。この平均寿命から健康寿命を差し引いた期間(男性約9年、女性約12年)が、介護など人の手助けが必要となる期間です。10年前後も介護期間があるのは、介護する側もされる側も大変です。ですから、世界に先駆けて超高齢社会を迎えた日本では、平均寿命ではなく健康寿命を延ばすことが何よりも重要なのです。
 健康寿命を延ばす方法として医師が異口同音に推奨するのは、働くことです。そうであれば高齢化対策の基軸は、定年を廃止してエイジ(年齢)フリーで働ける社会を創ることです。まだ十分働ける人を「定年」という形で強制的に引退させるのは、本当にもったいないことです。
 大阪にいる僕の友人たちは、全員がリタイアして年金生活に入っていますが、大学の聴講生になるなど、今も社会で精力的に活動しています。人間という動物は社会的な触れ合いがあるのが何より大事で、働いているほうが認知症も進みにくくなります。エイジフリーで働きたい人がいつまでも働ける社会を実現し、それを世界に示すことが、超高齢社会にいち早く到達した日本が果たすべき使命だと思います。

島澤 定年廃止を掲げると、「高齢者に優しい企業」といったとらえ方をする人もいますが、それとは少し意味合いが違いますね。

出口 僕が創業したライフネット生命でも、就業規則で定年制は廃止しています。仕事の実力と年齢が関係ないということは、逆に若い人でもやる気と実力があれば、どんどんキャリアがアップしていくということです。実際に私も親子ほど年が離れた社員と日々議論しながら職務に励んでいます。言い換えれば、定年制がない社会というのは究極の実力主義社会であるとも言えます。

島澤 定年制を廃止すれば、当然働いている最中に認知症や業務の遂行が困難になる人も出てきます。でもそういう方には辞めていただける仕組みがあればいいという話ですよね。もちろん、この場合、社会保障制度がしっかりしていることも重要です。

出口 そうなれば労働がさらに流動化し、解雇の自由という習慣も根付くはずです。若者が裾野にたくさんいるピラミッド型の社会は「敬老原則」でいいのです。でも高齢化社会になれば、「エイジフリー原則」に転換して、高齢者でも働きたい人はずっと働く。そして、年齢や医療などの社会保障は年齢にかかわらず(エイジフリー)、困っている人に集中すべきなのです。

1  2  3  4
  • はてなブックマークに追加





自分の半径5mから日本の未来と働き方を考えてみよう会議
出口治明・島澤諭 著



出口治明(でぐち・はるあき)
1948年、三重県生まれ。京都大学法学部卒業。1972年、日本生命保険相互会社入社。日本興業銀行(出向)、生命保険協会財務企画専門委員会委員長(初代)、ロンドン事務所長、国際業務部長などを経て、2006年に日本生命保険相互会社を退職。東京大学総長室アドバイザー、早稲田大学大学院講師などを経て、現在、ライフネット生命保険株式会社・代表取締役会長兼CEO。

島澤諭(しまさわ・まなぶ)
東京大学経済学部卒業。1994年、経済企画庁(現内閣府)入庁。2001年内閣府退官。秋田大学教育文化学部准教授等を経て、2015年4月より中部圏社会経済研究所経済分析・応用チームリーダー。この間、内閣府経済社会総合研究所客員研究員、財務省財務総合政策研究所客員研究員等を兼任。専門は世代間格差の政治経済学。