カルチャー
2015年1月26日
実は簡単には使えない保険の特約の「罠」(後編)
[連載]
保険ぎらいは本当は正しい【5】
監修・横川由理 文・長尾義弘
特約の罠(2)三大疾病特約・生活習慣病特約
「三大疾病特約」とは、「がん」「急性心筋梗塞」「脳卒中」に対応した特約です。
この特約をつけていれば、これらの病気になったときに給付金が出ると思い込んでいる方もけっこういるようですが、実はそれが間違いなのです。
この特約による支払いがあるのは、「がん、急性心筋梗塞、脳卒中」と診断され、さらに保険会社が定めた所定の状態になったときです。
所定の状態とは、たとえば脳卒中では、「診療を受けた日から60日以上、言語障害、運動失調、マヒなど神経学的後遺症が継続していると医師が診断した場合」です。
急性心筋梗塞も同じく60日以上、所定の状態が継続した場合です。
がんだけは例外的に、がんと診断されただけで支払いがあります。ただし、上皮内がん、皮膚がんは対象外です。つまり、その支払いにかなり厳しい条件がついた特約だと言わざるを得ません。
ただし、原因を問わず、死亡したり、高度障害になった場合は支払われます。
もう1つ、「生活習慣病入院特約」というのも、よく聞きます。
これに該当するのは、「がん」「糖尿病」「心・血管疾患」「高血圧性疾患」「脳血管疾患」「肝疾患」「膵疾患」「腎疾患」のうち、保険会社が定めた所定の病気となっています。急性腎不全、腎のう胞、肝臓・膵臓の良性腫瘍は所定の病気には含まれないので、特約の対象にはなりません。
また、一般的に定義されている生活習慣病とは違い、「肥満、高脂血症、高尿酸血症、循環器疾患(先天性を除く)、慢性気管支炎、肺気腫、歯周病、骨粗鬆症」は含まれていません。
年齢が上がるにつれて不安が増す疾病ですが、これらの特約は必ずしも安心材料にはならないと覚えておいたほうがいいでしょう。
特約の罠(3)介護特約
どんどん寿命が延び、〝長生きのリスク〟も考えないといけない時代になりました。
とくに介護は気になる問題ですが、介護の不安を少しでも解消するとうたうのが、介護特約です。
しかし、ちょっと確認をしてみてください。
かなり以前に入った保険に介護特約をつけていませんか?
こういった特約では、支払い対象となる介護の要件がかなり厳しいものがあります。
介護特約で支払いの条件となる要介護状態は、国が設定している要介護基準とは違うケースもありますが、公的介護保険でいう、要介護4または5に近い状態にならなければ対象となりません。
一方で、最近の介護特約は、条件が緩和されているものもあります。たとえば、朝日生命の介護特約は、要介護1の状態で支払いの対象になります。
大手保険会社では、支払い基準を緩和してきているところもあります。
たとえば、第一生命では2014年に、介護保険の支払事由を拡大して、それまでは要介護5に近い状態が支払いの条件だったのですが、要介護2の状態にまで緩和しています。
さらにこれを、平成13年までに発売された介護特約に適用されるようにしています。もちろん保険料は変わりません。
いずれにしても、以前の介護特約は、条件が厳しすぎました。
以前に入った保険で、介護特約に入っている方は、一度支払い条件を確認してみてください。条件変更になっている場合もあるので、保険会社に確認を取ってみてください。
条件が変更になっていなければ、見直しを検討したほうがいいでしょう。
また、特約ではなく、単独の介護保険には、要介護1で給付されるものもあれば、要介護4でしか給付されない保険もあります。当然ですが、要介護1で出る保険は、保険料が高めで、要介護4で出る保険は、保険料が安くなっています。
介護保険は、比較的新しく登場した商品で、これから進化するものです。今の時点では焦って加入をするより、老後のための貯蓄を厚くしていくなどの対応を取ることを中心に考えたほうがいいかもしれません。
(第5回・了)
[連載]保険ぎらいは本当は正しい 記事一覧
[1]保険は「何に?」ではなく、「入る」「入らない」から考えよう
[2]不安を何でも保険で解消は、大間違い
[3]保険の「万が一」って、どのぐらいの割合?
[4]実は簡単には使えない保険の特約の「罠」(前編)
[5]実は簡単には使えない保険の特約の「罠」(後編)
[6]「今、保険を解約すると損ですよ」のホンネ――保険会社の営業トーク
[7]「何となく入っている人」は必見! 保険選び3つのポイント
[8]賢い人は保険を総支払額で考える
[9]保険を見直す際には、「保険の空白期間」に要注意!
[10]貯蓄性保険の保険料値上げ・販売中止の続出でどうする?
[11]最大52%もの割引がある「リスク細分型保険」の魅力
[1]保険は「何に?」ではなく、「入る」「入らない」から考えよう
[2]不安を何でも保険で解消は、大間違い
[3]保険の「万が一」って、どのぐらいの割合?
[4]実は簡単には使えない保険の特約の「罠」(前編)
[5]実は簡単には使えない保険の特約の「罠」(後編)
[6]「今、保険を解約すると損ですよ」のホンネ――保険会社の営業トーク
[7]「何となく入っている人」は必見! 保険選び3つのポイント
[8]賢い人は保険を総支払額で考える
[9]保険を見直す際には、「保険の空白期間」に要注意!
[10]貯蓄性保険の保険料値上げ・販売中止の続出でどうする?
[11]最大52%もの割引がある「リスク細分型保険」の魅力
【監修者】横川由理(よこかわゆり)
FPエージェンシー代表、CFP、証券アナリスト、MBA(会計&ファイナンス)。お金の知識を広めることをライフワークとして、ファイナンシャル・プランニング技能士資格取得講座、マネー講座、執筆などを中心に幅広く活動している。著書に『50歳から役に立つ「お金のマル得術」』『老後にいくら必要か?』『アベノミクスで変わる「暮らしのお金」の○と×』(以上、宝島社)など多数。監修には「別冊宝島」の年度版シリーズ『よい保険・悪い保険』などがある。
http://fp-agency.com/
【著者】長尾義弘(ながおよしひろ)
ファイナンシャルプランナー、AFP。お金のしくみ、保険のカラクリについての得する情報を発信している。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。いくつかの出版社の編集部を経て、1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生みだす。著書に『コワ~い保険の話』(宝島社)、『こんな保険には入るな!』(廣済堂出版)、『商品名で明かす今いちばん得する保険選び』(河出書房新社)などがある。
http://neo.my.coocan.jp/
FPエージェンシー代表、CFP、証券アナリスト、MBA(会計&ファイナンス)。お金の知識を広めることをライフワークとして、ファイナンシャル・プランニング技能士資格取得講座、マネー講座、執筆などを中心に幅広く活動している。著書に『50歳から役に立つ「お金のマル得術」』『老後にいくら必要か?』『アベノミクスで変わる「暮らしのお金」の○と×』(以上、宝島社)など多数。監修には「別冊宝島」の年度版シリーズ『よい保険・悪い保険』などがある。
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【著者】長尾義弘(ながおよしひろ)
ファイナンシャルプランナー、AFP。お金のしくみ、保険のカラクリについての得する情報を発信している。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。いくつかの出版社の編集部を経て、1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生みだす。著書に『コワ~い保険の話』(宝島社)、『こんな保険には入るな!』(廣済堂出版)、『商品名で明かす今いちばん得する保険選び』(河出書房新社)などがある。
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