カルチャー
2015年2月10日
「肩こり」と「首こり」は全然違うもの!
[連載]
体の不調は「首こり」から治す、が正しい【10】
文・三井 弘
肩こりと間違えやすい「首こり」
ここまで、首は体の中でも特に重要な部分であること、首の不調を"単なる不調"として軽視してしまうと、ときに命に関わったり、心身の健康にさまざまな問題が生じてしまうということをお伝えしてきました。
けれども、首の不調を軽視しない、放っておかないと言われても、どの症状が首のトラブルから生じているのかわからないという方も多いのではないでしょうか。
クリニックに来られる患者さんも、「自分の抱える症状が、よもや首からきているとは思いもしなかった」とおっしゃる方が大半です。
たとえば「肩こり」と「首こり」。これの何が違うのかわからない方は多いと思います。そもそも首から肩にかけてのこりは、「肩こり」として認識されてしまう傾向があります。
首のあたりがこっているとの自覚がある方も、「これは肩こりからきている」と考えがちですし、「肩の筋肉が張っているのと同じように、首の筋肉が張ってこりになっている」と考える人も結構います。
要は、肩こりも首こりも同じようなものと考えられてしまいがちなのです。
もちろん、「こる」という症状が、筋肉からきているケースは少なくありません。
たとえば、徹夜で仕事をする、同じ姿勢で数時間パソコンやゲームをやる、夢中になって読書をする、同じ姿勢で何かの作業を続ける、思いついて運動をするなどしたときに、ひどい肩こりを感じることがあります。
これは筋肉を偏って使っていたり、左右の筋肉のバランスが崩れていたり、同じ筋肉を長時間使い続けたり、無理な仕事やスポーツをしたりといったことが筋肉の緊張や疲労につながって、肩から首にかけてこりを生じさせたためです。
このような筋肉性のこりは、筋肉の緊張によって血管が収縮し、血行が悪くなって、乳酸などの疲労物質が蓄積されることが主な原因です。
したがって、入浴や睡眠で血行をよくし、休養をちゃんと取ることで症状は緩和されます。
休んでよくなるようなら、筋肉の緊張からくる「肩こり」と考えて差し支えはありません。
しつこい肩こりは「首こり」を疑ったほうがよい
ところが、首の問題から「こり」が生じている場合は、何をやっても症状がよくならず、しつこいこりに悩まされます。
休んでも取れない「しつこい肩こり」は、「首こり」からきていると考えたほうがよいのです。
「首こり」の場合、その主たる原因は、頸椎の変形で神経根が圧迫されたり、刺激されたりすることです。それによって「肩こり」を引き起こしているということですから、筋肉の緊張や疲労とは根本的に原因が異なります。
「肩こり」が「首こり」からきているとわからなければ、「マッサージや整体で筋肉をほぐしてもらえばラクになる」と考えて、首に力をかけてしまい、かえって症状を悪化させることにもなりかねません。
ですから、休息をとっても、何をしても「こり」がよくならないときは、「肩こり」というより「首こり」を疑ってください。
さらに、肩こりと首こりの大きな違いをお伝えしておきましょう。
それは神経症状があるかないかです。具体的には、後頭部にかけての頭痛、手のしびれや冷え、痛みといった症状です。
慢性的な「こり」に加え、少しでもこのような症状が出ていたら、筋肉の疲れからくる肩こりと決めつけてしまわず、首の問題からきている「首こり」と考えて、早急に首を守る生活へとシフトしていただきたいと思います。
(第9回・了)
三井 弘(みつい ひろし)
1943年、岡山県岡山市生まれ。1970年、東京大学医学部を卒業。同整形外科入局。1977年より三井記念病院勤務。1984年「三井式頚椎手術器具」を開発。三井記念病院整形外科医長を経て、現在、三井弘整形外科・リウマチクリニック院長。専門分野は脊椎、関節(人工関節)。日本リウマチ学会評議員。著書に『体の痛みの9割は首で治せる!』(角川SSC新書)、『首は健康ですか?』(岩波アクティブ新書)など多数。
1943年、岡山県岡山市生まれ。1970年、東京大学医学部を卒業。同整形外科入局。1977年より三井記念病院勤務。1984年「三井式頚椎手術器具」を開発。三井記念病院整形外科医長を経て、現在、三井弘整形外科・リウマチクリニック院長。専門分野は脊椎、関節(人工関節)。日本リウマチ学会評議員。著書に『体の痛みの9割は首で治せる!』(角川SSC新書)、『首は健康ですか?』(岩波アクティブ新書)など多数。