カルチャー
2014年11月25日
「副腎疲労」になると幸せ物質(セロトニン)が減少する!
[連載] 「うつ?」と思ったら副腎疲労を疑いなさい【3】
文・本間龍介
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副腎疲労がひどいとセロトニンが分泌されない!


 実際、抗うつ薬を処方されている人たちのなかには、副腎疲労が根底に潜んでいるケースが多いと思われます。
 もちろん、抗うつ薬を服用しなければいけない人もいるでしょう。
 ただし、そもそもの原因が食生活にあったり、必ずしも抗うつ薬が必要でない人も少なくないと臨床を通じて痛感しています。

 ところで、うつ病に関して気を揉んでいる人であれば、セロトニンという神経伝達物質について聞いたことがある人も多いでしょう。

 セロトニンのことを称して「幸せ物質」などと呼ぶことがあります。ざっくりとした表現ではありますが、確かに、セロトニンが分泌されることで、心の落ち着きや安定、満足感などを得られます。

 逆に、何らかの理由でセロトニンの分泌量が少なくなってしまうと、不安感が強い、落ち着かない、気分が滅入るといった、いわゆる抑うつ状態になります。

 現状のうつ病に対する薬学的アプローチは、「使われなかったセロトニンを元の神経細胞に取り込ませずに、少ないセロトニンを利用して脳内セロトニン濃度を上げましょう」という方針です。
 こうした薬が、いわゆる「選択的セロトニン再取り込み阻害薬」です。

 この薬を飲むことで、セロトニンが増加したと脳に認識させ、気分の落ち込みなどが緩和されると考えられています。
 とはいえ、セロトニンの量が増えているように見せかけているだけで、セロトニンの生産量が増えているわけではありません。

 そのため、最初は何となくよくなった気がしていても、ずっと飲み続けているうちに、こうした小手先の対応では脳がだませなくなり、セロトニン不足をさらに補うために、薬の量を増やして対応する羽目になるのです。

 また、そもそも副腎疲労がひどいと、セロトニン自体を作れません。こうなれば、「セロトニンを再利用しよう」という戦法は、あまり有効とは言えないでしょう。

副腎疲労でセロトニン不足に


 こうした副腎疲労の状態に目が届かない限り、薬の量がどんどん増やされてしまいます。
 そうなると、脳内の薬の濃度が上昇して、より一層、体のバランスを崩しやすくなります。これが向精神薬全般にあてはまる問題点です。

セロトニンとメラトニンの関係 ※クリックすると拡大

 なおかつ、セロトニンの分解を阻害する薬を服用していると、抑うつ症状が取れても不眠症が残る弊害があります。
 というのも、本来であればセロトニンからメラトニンと呼ばれる睡眠に欠かせないホルモンが作られるのですが、薬の作用によって、その流れが途中でせき止められてしまうからです。

 そのためこうした抗うつ薬には、不眠症の薬がセットのように処方されます。
 もっとも、精神科の薬を一気に中止すると、脳がパニックを起こしてしまうので絶対厳禁です。

「症状がよくなっているからといって、急に薬をやめてはいけない」とよく言われますが、それは、薬を飲んで症状が改善していたとしても、セロトニンを作れる体に戻ったわけではなく、薬を使ってセロトニンがあるかのように見せかけたり、対症療法をしているだけだからです。

 大原則として、薬は一つひとつ、時間をかけて減らすこと。2、3年ぐらいの長期スパンで減薬に取り組むのが基本です。

 私たちのクリニックでも、そういった方針で進めていますが、同時に副腎疲労の治療を行うことで、1年経たずに順調に薬をやめられる人もたくさんいます。
 別の見方をすれば、そういう人たちは、もともとうつ病ではなかったのかもしれません。

 また、薬物療法に頼るだけでは根本的な完治は難しいでしょう。セロトニンを十分に分泌できる体を取り戻す。そのための取り組みが副腎疲労を取り除くケアです。

 副腎の疲れが溜まっているほど、セロトニン不足になりやすくなります。
 ですから、抗うつ薬を服用している人に限らず、精神的な不調の予防・改善のために、副腎ケアは大切なのです。

(第3回・了)





「うつ?」と思ったら副腎疲労を疑いなさい
9割の医者が知らないストレス社会の新病
本間龍介 著/本間良子 監修



【監修】本間良子(ほんま りょうこ)
埼玉県出身。スクエアクリニック院長。聖マリアンナ医科大学医学部卒業。同大学病院総合心療内科入局。専門は内科、皮膚科。日本抗加齢医学会専門医、米国抗加齢医学会フェロー、日本医師会認定産業医、日本内科学会会員。「副腎疲労」(アドレナル・ファティーグ)の第一人者であるウィルソン博士に師事。近年はアドレナル・ファティーグ外来にとどまらず、ホルモン補充療法やブレインマネジメントまで診療の幅を広げる。アドレナル・ファティーグの夫をサポートした経験から、患者家族へのアドバイスも親身に行っている。現在、南フロリダ大学大学院にて医療栄養学を専攻。著書に『しつこい疲れは副腎疲労が原因だった』(祥伝社文庫)がある。

【著者】本間龍介(ほんまりゅうすけ)
東京都出身。スクエアクリニック副院長。聖マリアンナ医科大学医学部卒業。同大学院医学研究科修了。医学博士。日本抗加齢医学会専門医・評議員、米国抗加齢医学会フェロー、日本医師会認定産業医、日本内科学会会員。「副腎疲労」(アドレナル・ファティーグ)の第一人者であるウィルソン博士に師事。自身もかつてアドレナル・ファティーグに苦しんだ経験を活かし、日本ではまだ数少ない外来診療を行っている。監修に『しつこい疲れは副腎疲労が原因だった』(祥伝社文庫)がある。
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