カルチャー
2014年11月28日
真面目な日本人は「副腎疲労」になりやすい
[連載] 「うつ?」と思ったら副腎疲労を疑いなさい【4】
文・本間龍介
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あらゆるストレスと戦うのが副腎の仕事


 副腎は「ストレスの腺」といえます。要するに、心身が受けるありとあらゆるストレス源に対して体を守ろうとするのが副腎の仕事です。

 ストレスの原因は、精神的ストレス、環境的ストレス、生物的・肉体的ストレス、化学的ストレス......実にさまざまです。

 精神的ストレスは、たとえば、社会生活から生じるストレス(仕事や家庭、そのほか人間関係のトラブル、別離など)、自分自身の心理的な要素から生まれるストレス(不安や恐れ、怒り、挫折など)があります。私たちが日頃「ストレス」と意識するのは、こうした精神的ストレスが多いでしょう。

 正直言って、のらりくらりと何も考えずに生きているような人は、副腎疲労になりにくいでしょう。
 一方、自分の人生において、トライアンドエラーを続けて頑張る人、高みを目指す人、問題意識を持っている人、きっちりしている人こそ、副腎疲労になるリスクは高まってしまいます。

 もっとも、現代を生きる私たちは、精神的ストレス以外にも、たくさんのストレスに囲まれています。
 環境的ストレス(寒冷、騒音、照明、放射線、ほこり、気圧など)、生物的・肉体的ストレス(炎症、感染、あるいは病気全般、栄養不足、睡眠不足、運動不足など)、化学的ストレス(空気汚染、薬、食品添加物、化学合成物質、お酒、タバコなど)......挙げたらキリがないほどです。

 これらのなかには、「ストレスだ」と意識していないものも多々あるでしょう。要するに、私たちの体は知らない間に数々のストレスを受けているのです。四六時中、ストレスと戦っていると言っても過言ではありません。

ストレスに副腎が耐えられないとうつに似た症状が現れる


 さて、私たちの体はこうしたストレスにどのように対抗しているのでしょうか。
 ストレスに対する基本的な体の反応については、カナダの生理学者、ハンス・セリエが発表したストレス学説がよく知られています。

セリエのストレス学説 ※クリックすると拡大

 まず、ストレスを受けてからの時間経過と体の反応は「警告反応期→抵抗期→疲憊期」と大きく3段階に分けられます。

 第1段階は警告反応期で、ストレスに対して体に警報を鳴らし、ストレスに対応するための体の準備を、急速に整えようとする段階です。
 警告反応期は、さらにショック相(受動的反応期)と反ショック相(能動的反動期)の2段階に分けられます。

 ショック相は、突然のストレスに対して十分に適応できずにショックを受けている状態です。具体的には、自律神経のバランスが崩れて、心拍数低下、血圧低下、体温低下、血糖値低下、筋緊張の弛緩、血液濃度の上昇などが見られます。この段階が続くのは、数時間~1日程度と考えられています。

 続く反ショック相は、突然のストレスに対するショックから立ち直る段階です。反ショック相の間に、副腎が頑張ってストレスに対抗する体を作ります。

 こうした警告反応期を経て、なおストレスにさらされると、抵抗期と呼ばれる第2段階に突入します。この段階では、ストレスに対する適応が完成して、副腎がストレスに抵抗している段階です。

 また、ストレスに抵抗し続けるには相応のエネルギーを要するので、副腎の疲れも溜まってきます。
 この時期には、感情の起伏が激しくなったり、精神的に落ち込みやすくなります。また、血圧が乱高下したり、血糖値が高くなったり、身体的にも調子が不安定になりやすくなります。そのほか、睡眠に支障をきたす場合もよくあります。

 この抵抗期に何とかストレスが収まれば、心身ともに平常モードに戻りますが、いよいよストレスに耐えきれなくなると、疲憊期へと突入してしまいます。

 第3段階の疲憊期は、長期にわたって続くストレスに抵抗しきれなくなっている段階です。
 徐々にストレスに副腎が耐えきれなくなり、さまざまなストレス性疾患が現れます。

 疲憊期の初期には、第1段階のショック相の頃のような状態になり、さらにストレスが続くと、神経や筋肉の働きも鈍るなど、心身ともに衰弱して、うつ病に似た症状が現れるのです。









「うつ?」と思ったら副腎疲労を疑いなさい
9割の医者が知らないストレス社会の新病
本間龍介 著/本間良子 監修



【監修】本間良子(ほんま りょうこ)
埼玉県出身。スクエアクリニック院長。聖マリアンナ医科大学医学部卒業。同大学病院総合心療内科入局。専門は内科、皮膚科。日本抗加齢医学会専門医、米国抗加齢医学会フェロー、日本医師会認定産業医、日本内科学会会員。「副腎疲労」(アドレナル・ファティーグ)の第一人者であるウィルソン博士に師事。近年はアドレナル・ファティーグ外来にとどまらず、ホルモン補充療法やブレインマネジメントまで診療の幅を広げる。アドレナル・ファティーグの夫をサポートした経験から、患者家族へのアドバイスも親身に行っている。現在、南フロリダ大学大学院にて医療栄養学を専攻。著書に『しつこい疲れは副腎疲労が原因だった』(祥伝社文庫)がある。

【著者】本間龍介(ほんまりゅうすけ)
東京都出身。スクエアクリニック副院長。聖マリアンナ医科大学医学部卒業。同大学院医学研究科修了。医学博士。日本抗加齢医学会専門医・評議員、米国抗加齢医学会フェロー、日本医師会認定産業医、日本内科学会会員。「副腎疲労」(アドレナル・ファティーグ)の第一人者であるウィルソン博士に師事。自身もかつてアドレナル・ファティーグに苦しんだ経験を活かし、日本ではまだ数少ない外来診療を行っている。監修に『しつこい疲れは副腎疲労が原因だった』(祥伝社文庫)がある。
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