カルチャー
2014年11月18日
「なんか疲れが取れない...」その原因は"副腎"にあった!
[連載] 「うつ?」と思ったら副腎疲労を疑いなさい【1】
文・本間龍介
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ストレス社会の新病「副腎疲労」


 「疲れたな......」と感じる瞬間は誰にでもあります。ですから、「仕方ないこと」としてやり過ごしている人が大半ではないでしょうか。
 けれども、それは当たり前でも、年齢のせいでもなく、実は、副腎疲労が原因かもしれません。

 副腎(アドレナル)は「ストレスの腺」と称されていて、私たちの心身に降りかかるストレス、そのすべてに対してあまねく反応しています。
 そんな副腎の機能が低下すればするほど、心身の疲労が強まり、慢性疲労が色濃く現れるのです。
 そして、重篤な副腎疲労になると、いよいよベッドから出られなくなったり、イライラや不安感がつのる、気がふさぐなど、うつ病にきわめてよく似た症状を呈するのです。

 副腎の疲労度は、ストレスの大きさによって左右されます。
 たとえば、愛する人の死や、深刻な病気やケガ、暴力、いじめなど、こうした不幸な出来事は、副腎に非常に大きなダメージを与えます。

 それだけではなく、仕事への不満、プレッシャー、職場の人間関係、長時間労働、家族との口論、育児、介護、睡眠不足、運動不足など、日常に潜むストレスの数々も、多かれ少なかれ副腎に負担をかけます。

 つまり、こうしたストレスの積み重ねが副腎に疲労を蓄積させて、これといった原因のわからないだるさや疲れ、さらには心身のさまざまな不調を呼び込んでしまうのです。
 残念ながら、今日の医療では、病院で疲れやだるさを訴えても、これといった治療は受けられないでしょう。
 程度の差こそあれ、疲労自体はありふれた症状ですし、ましてや、副腎にアプローチすることは、ほぼ皆無。何しろ現代医学においては、副腎疲労は「存在しない病」なのです。

海外では常識の「副腎疲労」


 高度情報化社会と言われ、めまぐるしく変化する世の中にあって、十分な休息やリラックスタイムを持てない人も多いでしょう。
 さらには、ストレスフル社会とも呼ばれる昨今、年齢や性別を問わず、誰しもが副腎疲労に陥る可能性は大いにありうるのです。

 また、性格的には、真面目な人、頑張り屋、完璧主義者、感情をあらわにできないタイプの人などは要注意。そういう意味でも、日本人は副腎疲労を招きやすいタイプと言えるでしょう。
 事実、厚生労働省の調査によると、うつ病・躁うつ病の総患者数は、1999年の段階で44.1万人。その後、上昇し続けて、2008年には104.1万人にまで増えています。

 大まかに言えば、10年の間に患者数が倍増し、100万人もの人が苦しんでいるわけです。このデータは、通院歴のある人のみなので、実際には、ひどい慢性疲労や抑うつ症状に悩まされている人は、もっと大勢いるでしょう。

 たとえば、日頃から疲れが溜まっていて、心身をシャッキリさせるために、コーヒーやエナジードリンクを飲んだり、自分にむちを打ちながら何とか乗り切っているような人も気をつけてほしいところ。将来的には副腎疲労でダウンしてしまうおそれが十分に考えられます。

 では、どうすれば副腎疲労を避けられるのでしょうか。
 それが、この連載のテーマです。

 一般的には、これまで副腎は、スポットを浴びる機会がほとんどありませんでした。しかしながら、副腎疲労(アドレナル・ファティーグ)という概念が、1990年代にアメリカの医師であるジェームズ・L・ウィルソン博士によって提唱されて、近年は、アメリカのみならず、ヨーロッパの抗加齢医学会においても、副腎疲労の概念が注目を集めています。

 なかでも、アメリカの抗加齢医学会では、うつ病、甲状腺の病気、喘息、感染症、高血圧、糖尿病などの治療、あるいはアンチエイジングとしてのホルモン補充療法、ビタミン補充療法を行う際には、副腎疲労の治療を優先するように指導されているほどです。
 そのほか、アメリカでは兵士のストレスケアとしても、副腎疲労の考え方が応用されています。

 このように、副腎疲労は医学的に認められた疾患群や症候群でこそありませんが、抗加齢医学の臨床現場では非常に重要視されています。






「うつ?」と思ったら副腎疲労を疑いなさい
9割の医者が知らないストレス社会の新病
本間龍介 著/本間良子 監修



【監修】本間良子(ほんま りょうこ)
埼玉県出身。スクエアクリニック院長。聖マリアンナ医科大学医学部卒業。同大学病院総合心療内科入局。専門は内科、皮膚科。日本抗加齢医学会専門医、米国抗加齢医学会フェロー、日本医師会認定産業医、日本内科学会会員。「副腎疲労」(アドレナル・ファティーグ)の第一人者であるウィルソン博士に師事。近年はアドレナル・ファティーグ外来にとどまらず、ホルモン補充療法やブレインマネジメントまで診療の幅を広げる。アドレナル・ファティーグの夫をサポートした経験から、患者家族へのアドバイスも親身に行っている。現在、南フロリダ大学大学院にて医療栄養学を専攻。著書に『しつこい疲れは副腎疲労が原因だった』(祥伝社文庫)がある。

【著者】本間龍介(ほんまりゅうすけ)
東京都出身。スクエアクリニック副院長。聖マリアンナ医科大学医学部卒業。同大学院医学研究科修了。医学博士。日本抗加齢医学会専門医・評議員、米国抗加齢医学会フェロー、日本医師会認定産業医、日本内科学会会員。「副腎疲労」(アドレナル・ファティーグ)の第一人者であるウィルソン博士に師事。自身もかつてアドレナル・ファティーグに苦しんだ経験を活かし、日本ではまだ数少ない外来診療を行っている。監修に『しつこい疲れは副腎疲労が原因だった』(祥伝社文庫)がある。
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