カルチャー
2014年11月28日
真面目な日本人は「副腎疲労」になりやすい
[連載] 「うつ?」と思ったら副腎疲労を疑いなさい【4】
文・本間龍介
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真面目な日本人は副腎疲労になりやすい


 アメリカの心理学者ホームズとラーによって開発されたストレスを細かく数値化した表があります。具体的にストレス源となる項目を挙げて、それに対して、1点から100点まで点数をつけているのです。

 いくつか例を挙げると、配偶者の死が100点、結婚が50点、妊娠が40点、転職が36点。こうしたストレスが1年間に150点を超えると、体調を崩すリスクが5割、300点を超えると8割近くにもなると考えられていて、ストレスをマネジメントする一つの指標になっています。  

 こうした数値は、誰にでもそっくりそのままあてはまるものではありませんが、ストレスを蓄積させて一定限度を超えてしまうと、心身のコンディションを崩すことは確かです。
 実際、副腎疲労で来院される患者さんも、何か大きなきっかけがあって、心身の変調をきたす人がほとんどです。

 たとえば、両親など身近な人の死、介護、リストラ、離婚、出産......きっかけはさまざまです。出産といったおめでたい出来事にしても、一方で心身に大きなストレスになりえます。また、出産後の養育が大きなストレスになっているケースも少なくありません。

 こうしてみると、誰でも大きなストレスに見舞われる可能性があり、対岸の火事のように考えるわけにはいきません。将来的なことも含めれば、誰でもストレスによる心身の不調は起こりうることです。
 
 ごく近しい人が亡くなったときに何とも思わない人はいないとしても、亡くなり方や、その人との関係性などによっても、その度合いは異なるでしょう。離婚にしても、大きなダメージを受ける人もいれば、いたって元気な人もいます。

 そもそも、ストレスに対するディフェンス力は人によって大きく異なり、副腎の機能自体も個人差があります。

 たとえば、偉人と呼ばれるような人は、他人のことは意に介さずマイペース。えてして「鈍感力」が高いのですが、彼らは副腎自体も頑強なのだと思います。
 人が気に病み、ストレスと感じるようなことを、ストレスと感じずに平然としていられるのは、もはや一つの能力です。

「鈍感」という表現だと聞こえが悪いですが、別の言い方をすれば、何かストレスになるような出来事にぶち当たっても、「大丈夫! 自分は乗り切れるよ」と受け止められる──ストレスに強い裏には、自己に対する自信や肯定を備えていると考えられます。

 とはいえ、日本人は特に真面目な人が多く、物事をきっちりしたい気質なので、人種的にも副腎疲労に陥りやすいのではないでしょうか。

(第4回・了)








「うつ?」と思ったら副腎疲労を疑いなさい
9割の医者が知らないストレス社会の新病
本間龍介 著/本間良子 監修



【監修】本間良子(ほんま りょうこ)
埼玉県出身。スクエアクリニック院長。聖マリアンナ医科大学医学部卒業。同大学病院総合心療内科入局。専門は内科、皮膚科。日本抗加齢医学会専門医、米国抗加齢医学会フェロー、日本医師会認定産業医、日本内科学会会員。「副腎疲労」(アドレナル・ファティーグ)の第一人者であるウィルソン博士に師事。近年はアドレナル・ファティーグ外来にとどまらず、ホルモン補充療法やブレインマネジメントまで診療の幅を広げる。アドレナル・ファティーグの夫をサポートした経験から、患者家族へのアドバイスも親身に行っている。現在、南フロリダ大学大学院にて医療栄養学を専攻。著書に『しつこい疲れは副腎疲労が原因だった』(祥伝社文庫)がある。

【著者】本間龍介(ほんまりゅうすけ)
東京都出身。スクエアクリニック副院長。聖マリアンナ医科大学医学部卒業。同大学院医学研究科修了。医学博士。日本抗加齢医学会専門医・評議員、米国抗加齢医学会フェロー、日本医師会認定産業医、日本内科学会会員。「副腎疲労」(アドレナル・ファティーグ)の第一人者であるウィルソン博士に師事。自身もかつてアドレナル・ファティーグに苦しんだ経験を活かし、日本ではまだ数少ない外来診療を行っている。監修に『しつこい疲れは副腎疲労が原因だった』(祥伝社文庫)がある。
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