カルチャー
2014年12月2日
万病は「副腎疲労」からやってくる!
[連載] 「うつ?」と思ったら副腎疲労を疑いなさい【5】
文・本間龍介
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副腎疲労が改善したAさんの例


 40代の男性Aさんは、元来はバイタリティあふれるタイプ。外資系企業でバリバリ働き続けてきて、周りからの評価も高い有能な人でした。

 そんな彼が外来を訪れたとき、頭にモヤがかかったような感じがあると話し、思考力や記憶力の低下が気になっていました。自身では、「若年性の認知症になったのではないか」と恐れていました。

 彼は過労が当たり前のような環境で長らく過ごしていたので、コルチゾールというホルモンの分泌量が常時高いレベルにありました。これは、副腎が無理をして頑張っている状態です。

 しかしながら、いよいよ副腎が悲鳴を上げて、彼の活動量に見合うだけのコルチゾールを分泌できない状態になっていたのです。

 話を聞いてみると、朝から晩まで働きづめ。朝は苦手な一方、夜になると調子が上がるタイプなので、深夜まで残業するスタイルだったそうです。
 ちなみに、こうした夜型の生活に陥りやすいのも副腎疲労の特徴です。

 また、多忙のために食事は主にパンやおむすび、ラーメンなど、サッと済ませられるようなもの。炭水化物に偏った食事内容で、一方、体に活を入れるために、コーヒーやコーラをよく飲んでいました。

 Aさんのライフスタイルは、仕事中心で世界が回っているようなタイプの典型の一つ。時間に追い立てられながら毎日を過ごしている、現代の日本人の多くにあてはまると言っても過言ではありません。

 彼の自覚症状も、病院によっては、うつ病と診断されたり、年代によっては認知症を疑われることが多々あります。しかしながら、これはあくまでも副腎疲労を原因とする不調だったのです。

 Aさんには、食事と生活習慣の改善に取り組んでもらったところ、およそ1ヵ月半後には「頭がスッキリしてきた」と話してくれました。
 ちなみに、ほかの患者さんの場合でも、早ければ2週間ぐらい、平均すると3~6ヵ月で、はっきりとした改善が得られるケースが多いのです。

 抑うつ症状については本章で述べましたが、特に、抗うつ剤が効きにくいうつ病の人や、体調が上向きになっても、いざ復職すると、すぐに体調を崩してしまうようなタイプの人は、ほぼ間違いなく副腎疲労が絡んでいます。

 外来では、看護師のようなシフトワーカー、介護などに長年携わってきたような人、あるいは、引きこもりや不登校、発達障害が疑われていた子どもなど、年齢性別を問わず、さまざまな問題を抱えた人たちが副腎治療のプログラムを進めていくなかで、大きな治療成果が得られています。

 そのほか、不妊の治療や更年期障害の予防にあたっても、副腎疲労の治療を同時に行うことで、よりよい結果につながるケースが少なくありません。

 副腎疲労は程度の差こそあれ、決して無縁な人はいません。何か不調があるとすれば、副腎疲労の観点から見直してみることをおすすめします。

(第5回・了)








「うつ?」と思ったら副腎疲労を疑いなさい
9割の医者が知らないストレス社会の新病
本間龍介 著/本間良子 監修



【監修】本間良子(ほんま りょうこ)
埼玉県出身。スクエアクリニック院長。聖マリアンナ医科大学医学部卒業。同大学病院総合心療内科入局。専門は内科、皮膚科。日本抗加齢医学会専門医、米国抗加齢医学会フェロー、日本医師会認定産業医、日本内科学会会員。「副腎疲労」(アドレナル・ファティーグ)の第一人者であるウィルソン博士に師事。近年はアドレナル・ファティーグ外来にとどまらず、ホルモン補充療法やブレインマネジメントまで診療の幅を広げる。アドレナル・ファティーグの夫をサポートした経験から、患者家族へのアドバイスも親身に行っている。現在、南フロリダ大学大学院にて医療栄養学を専攻。著書に『しつこい疲れは副腎疲労が原因だった』(祥伝社文庫)がある。

【著者】本間龍介(ほんまりゅうすけ)
東京都出身。スクエアクリニック副院長。聖マリアンナ医科大学医学部卒業。同大学院医学研究科修了。医学博士。日本抗加齢医学会専門医・評議員、米国抗加齢医学会フェロー、日本医師会認定産業医、日本内科学会会員。「副腎疲労」(アドレナル・ファティーグ)の第一人者であるウィルソン博士に師事。自身もかつてアドレナル・ファティーグに苦しんだ経験を活かし、日本ではまだ数少ない外来診療を行っている。監修に『しつこい疲れは副腎疲労が原因だった』(祥伝社文庫)がある。
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