カルチャー
2014年12月5日
ストレスを調整! 知られざる臓器「副腎」に注目
[連載] 「うつ?」と思ったら副腎疲労を疑いなさい【6】
文・本間龍介
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副腎皮質ホルモンの働き ※クリックすると拡大

 こうした副腎皮質から分泌されるホルモンは総称として、副腎皮質ホルモンと呼ばれています。副腎皮質ホルモンの働きはのとおりですが、とりわけここでクローズアップしたいのは、ストレスに対抗する働きです。

 ノルアドレナリン、アドレナリンは、「火事場の馬鹿力」のような瞬発的な対応が得意なのに対して、副腎皮質は継続的にストレスと向き合い続けるのが特徴です。

 ただし、生命体にとって最優先すべきストレスは、「飢餓や外敵との戦い」です。ですから、副腎皮質ホルモンは「食べ物が食べられない状況下で外敵と戦う」ために、うまく立ち回れるように作用するのが基本です。

 言い方を変えれば、副腎皮質ホルモンは生命維持のために重要な役割を果たすホルモンです。
 とはいえ、現代は飽食の時代で飢餓とは縁遠いのが現実です。そのため、ストレスに対する反応が、かえって体にとってマイナスに働いてしまうケースもままあるのです。

過剰なコルチゾールは生活習慣病の引き金に


 たとえば、コルチゾールは「空腹でも戦える体」を作る準備として、血糖値を上げる方向で作用します。そして、血糖値を上げることを第一目的として、糖代謝のほか、タンパク質、脂質の代謝を制御します。

 ところで、私たちの体の仕組みは、血糖値を下げるより「上げよう」とする働きが強力です。具体的には、血糖値を上げるホルモンは、コルチゾールをはじめとして、いくつもある一方、血糖値を下げるホルモンは唯一インスリンのみです。

 なぜ、そういった傾向があるのかと言えば、人類の長い歴史のほとんどは、飢餓による生命維持の危機にさらされていたからです。ですから、飽食の世の中になる時代までは、非常に理に適った命を守るためのシステムだったわけです。

 残念ながら、体の仕組みは私たちの社会変化には追いついていません。そのため、「血糖値が下がりすぎる」リスクに対するフォローは比較的得意なのに対して、逆の心配、すなわち「血糖値が上がりすぎる」リスクのフォローは、元来、苦手としています。

 また、コルチゾールの分泌が多くなると、血糖値を下げるインスリンの効き方も悪くなってしまうので、いよいよ糖尿病のリスクが高まります。

 一方、アルドステロンは、全身のコンディションを大いに左右する、体内の水分代謝、血圧に関係しています。具体的には、体内の水分は保持、血圧は上昇させる方向で作用します。

 いずれも戦闘態勢に備えるにはいいのですが、こうした状態が度を越すと、高血圧やむくみなどの原因になります。

 また、アルドステロンはナトリウム(塩分)を貯蓄して、カリウムを排出する作用を持っています。というのも、ナトリウムとカリウムは、そのバランスをコントロールすることによって、体内の水分や血圧の調節にかかわっているからです。

 そのほかにも、ナトリウムやカリウムは、神経や筋肉の働きを正常に保つために欠かせない大切なミネラル。ですから、コルチゾールの働きは重要なのです。

(第6回・了)








「うつ?」と思ったら副腎疲労を疑いなさい
9割の医者が知らないストレス社会の新病
本間龍介 著/本間良子 監修



【監修】本間良子(ほんま りょうこ)
埼玉県出身。スクエアクリニック院長。聖マリアンナ医科大学医学部卒業。同大学病院総合心療内科入局。専門は内科、皮膚科。日本抗加齢医学会専門医、米国抗加齢医学会フェロー、日本医師会認定産業医、日本内科学会会員。「副腎疲労」(アドレナル・ファティーグ)の第一人者であるウィルソン博士に師事。近年はアドレナル・ファティーグ外来にとどまらず、ホルモン補充療法やブレインマネジメントまで診療の幅を広げる。アドレナル・ファティーグの夫をサポートした経験から、患者家族へのアドバイスも親身に行っている。現在、南フロリダ大学大学院にて医療栄養学を専攻。著書に『しつこい疲れは副腎疲労が原因だった』(祥伝社文庫)がある。

【著者】本間龍介(ほんまりゅうすけ)
東京都出身。スクエアクリニック副院長。聖マリアンナ医科大学医学部卒業。同大学院医学研究科修了。医学博士。日本抗加齢医学会専門医・評議員、米国抗加齢医学会フェロー、日本医師会認定産業医、日本内科学会会員。「副腎疲労」(アドレナル・ファティーグ)の第一人者であるウィルソン博士に師事。自身もかつてアドレナル・ファティーグに苦しんだ経験を活かし、日本ではまだ数少ない外来診療を行っている。監修に『しつこい疲れは副腎疲労が原因だった』(祥伝社文庫)がある。
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