カルチャー
2014年12月9日
「ステロイドは怖い」って本当?
[連載] 「うつ?」と思ったら副腎疲労を疑いなさい【7】
文・本間龍介
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アレルギーと自己免疫疾患にも副腎が関与している


 ステロイドが怖いと思われるのは、今の医療にも問題があるでしょう。とりあえず火消しはしても、火種まで消してはいないのですから。

 火種には、さまざまな原因があります。本来は、火種をきちんと消すことこそ、根本的な治療なのです。そこにアプローチしていないがゆえに、アトピーに悩む人たちの一部が、「ステロイド=怖い」という図式を信じ込んでしまうのでしょう。

 ところで、アレルギーには、いくつものメカニズムや経路が存在します。
 抗原(アレルギーを引き起こす原因=アレルゲン)はいろいろありますが、食事性抗原(グルテンやカゼインなど特定の食べ物)と吸入性抗原(たとえばダニやほこり、花粉など)に大別できます。

即時型アレルギー ※クリックすると拡大

 数あるアレルギーのうち、一番ポピュラーなのがIgEと呼ばれる抗体を介したアレルギーです。抗体とは、体内の細菌やウイルスなど、「悪いもの」に対抗しようとして働く物質です。

 IgEは即時型といって反応がすぐに現れるタイプ。前述のアトピーや、近年増えている花粉症もこれにあてはまります。ちなみに、血液検査では、このIgEの量を調べることでアレルギーの有無や程度を数値化します。

 一方、IgGと呼ばれる抗体は遅延型と呼ばれ、ある程度の時間が経ってから反応が現れるタイプです。数時間後、あるいは場合によっては2日後くらいに反応するので、なかなかアレルギーが原因による不調だと気づきにくいという難点があります。

 たとえば、腸の粘膜が悪い人が、健康のためにと思って、バナナなど特定の食品をせっせと食べて、腸の炎症を余計に悪化させ、検査をしてみると、実はIgGの数値が高かったなどというケースが案外多いのです。

 アレルギーは、過剰な免疫反応が原因であり、免疫のコントロールにかかわる副腎皮質とも無縁ではありません。そして、いずれにしても、アレルギーによる炎症を抑えるにはコルチゾールが不可欠です。

 副腎疲労が溜まってコルチゾールが十分に分泌されないと、アレルギーを悪化させる原因になります。逆に、副腎疲労のケアをすることで、アレルギーの改善につながる症例もたくさんあるのです。

 他方、自己免疫疾患とは、本来であれば、異物を認識して排除するための役割を担う免疫系が、自分自身の正常な細胞や組織に反応して攻撃をする病気です。
 橋本病、バセドウ病といった、特定の臓器のみ影響を受ける臓器特異的自己免疫疾患や、関節性リウマチ、全身性エリテマトーデスといった、全身に影響を受ける全身性自己免疫疾患など、自己免疫疾患にもいろいろあります。

 コルチゾールは免疫機能を抑制する働きがあると誤解されることも多いのですが、本来は、免疫をちょうどいいバランスに調整する役目を担っています。
 「自己」である細胞や組織に対しては反応しない、いわゆる免疫寛容と呼ばれる状態を保つのもコルチゾールの仕事です。ですから、副腎疲労が自己免疫疾患を誘発する要因にもなりえます。

 また、自己免疫疾患は慢性炎症でもあり、コルチゾールを必要とするので、治療の現場でもステロイドをしっかり使います。

 一方、自己免疫疾患になると、副腎疲労の悪化につながります。
 要するに、自己免疫疾患と副腎疲労とは互いに関係しているので、自己免疫疾患の人は治療の一環として、副腎疲労を取り除くことに目を向けてみるのも良策だと思います。

(第7回・了)








「うつ?」と思ったら副腎疲労を疑いなさい
9割の医者が知らないストレス社会の新病
本間龍介 著/本間良子 監修



【監修】本間良子(ほんま りょうこ)
埼玉県出身。スクエアクリニック院長。聖マリアンナ医科大学医学部卒業。同大学病院総合心療内科入局。専門は内科、皮膚科。日本抗加齢医学会専門医、米国抗加齢医学会フェロー、日本医師会認定産業医、日本内科学会会員。「副腎疲労」(アドレナル・ファティーグ)の第一人者であるウィルソン博士に師事。近年はアドレナル・ファティーグ外来にとどまらず、ホルモン補充療法やブレインマネジメントまで診療の幅を広げる。アドレナル・ファティーグの夫をサポートした経験から、患者家族へのアドバイスも親身に行っている。現在、南フロリダ大学大学院にて医療栄養学を専攻。著書に『しつこい疲れは副腎疲労が原因だった』(祥伝社文庫)がある。

【著者】本間龍介(ほんまりゅうすけ)
東京都出身。スクエアクリニック副院長。聖マリアンナ医科大学医学部卒業。同大学院医学研究科修了。医学博士。日本抗加齢医学会専門医・評議員、米国抗加齢医学会フェロー、日本医師会認定産業医、日本内科学会会員。「副腎疲労」(アドレナル・ファティーグ)の第一人者であるウィルソン博士に師事。自身もかつてアドレナル・ファティーグに苦しんだ経験を活かし、日本ではまだ数少ない外来診療を行っている。監修に『しつこい疲れは副腎疲労が原因だった』(祥伝社文庫)がある。
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