カルチャー
2015年1月6日
正月疲れ解消は「腸内改善」から
[連載] 「うつ?」と思ったら副腎疲労を疑いなさい【11】
文・本間龍介
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脳と腸のコンディションが共鳴する不思議


 緊張や不安、過度のストレスなどでお腹が痛くなるなど、メンタルとお腹の調子が関係していることは、多くの人が経験的に知っていると思います。
 近年は、電車に乗ると下痢をしてしまうといった過敏性腸症候群も増えています。
 こうした脳と腸の深いつながりについては、少しずつ科学的な説明が追いつくようになってきました。

 たとえば、精神安定に不可欠なセロトニンは、脳だけでなく腸でも作られています。脳内のセロトニンが低くなるとうつになるとも言われていますが、そもそも、体内のセロトニンのおよそ8割は腸にあり、蠕動運動を促す働きをしているのです。

 事実、腸内環境を整えると、脳にもいい影響をもたらすという研究報告が増えてきています。こうした相関関係については、アメリカのセミナーで活発に議論が交わされています。
 また、リーキーガット症候群があると、腸だけでなく脳にも悪影響を及ぼし、頭がボーっとしたり、必要なことをこなせなくなるとも言われています。

 こうした関連性があるとすれば、抑うつ症状を改善するために、腸にアプローチするのは不思議ではなく、むしろ必要不可欠です。
 腸と脳とは互いに関連し合っていることは、かなり明確になっている事実ではありますが、一方で、関係ないと考える人もいます。

脳と腸の深いかかわり ※クリックすると拡大

 その理由としては、脳は特殊で、BBB(ブラッド・ブレイン・バリア)と呼ばれる関門があるから。それが、彼らの主張です。
 日本語では「血液脳関門」と訳されますが、BBBは血液を通じて脳に悪いものが入ってこないための防護壁のようなものです。

 こうしたBBBの存在から、腸のセロトニンは脳に作用することはない、同じセロトニンでも別物である──それが従来の基礎的医学の考え方でした。
 しかしながら、実は、そこまでBBBは万能ではないのではないか──こうした、かつての常識を覆す説が出てきているのです。

 なぜなら、脳を解剖してみると、アルツハイマー型の認知症だった人はアルミニウムが高い、パーキンソン病だった人は水銀や鉛が高いといった報告があるからです。つまり、明らかに脳にも重金属=毒が入ってきているのです。

 あくまでも仮説ですが、同一人物の体内で巡っているセロトニンなので、脳のセロトニンと腸のセロトニンが、共有して使われる可能性は否定できないでしょう。

 ですから、うつ的症状を治すためにセロトニンを増やしたいのであれば、腸のセロトニンも含めて考えたほうが、ゴールに辿り着きやすいと思います。

(第11回・了)








「うつ?」と思ったら副腎疲労を疑いなさい
9割の医者が知らないストレス社会の新病
本間龍介 著/本間良子 監修



【監修】本間良子(ほんま りょうこ)
埼玉県出身。スクエアクリニック院長。聖マリアンナ医科大学医学部卒業。同大学病院総合心療内科入局。専門は内科、皮膚科。日本抗加齢医学会専門医、米国抗加齢医学会フェロー、日本医師会認定産業医、日本内科学会会員。「副腎疲労」(アドレナル・ファティーグ)の第一人者であるウィルソン博士に師事。近年はアドレナル・ファティーグ外来にとどまらず、ホルモン補充療法やブレインマネジメントまで診療の幅を広げる。アドレナル・ファティーグの夫をサポートした経験から、患者家族へのアドバイスも親身に行っている。現在、南フロリダ大学大学院にて医療栄養学を専攻。著書に『しつこい疲れは副腎疲労が原因だった』(祥伝社文庫)がある。

【著者】本間龍介(ほんまりゅうすけ)
東京都出身。スクエアクリニック副院長。聖マリアンナ医科大学医学部卒業。同大学院医学研究科修了。医学博士。日本抗加齢医学会専門医・評議員、米国抗加齢医学会フェロー、日本医師会認定産業医、日本内科学会会員。「副腎疲労」(アドレナル・ファティーグ)の第一人者であるウィルソン博士に師事。自身もかつてアドレナル・ファティーグに苦しんだ経験を活かし、日本ではまだ数少ない外来診療を行っている。監修に『しつこい疲れは副腎疲労が原因だった』(祥伝社文庫)がある。
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