カルチャー
2015年12月17日
創価学会でさえ退潮の兆しが見えている
[連載] 宗教消滅─資本主義は宗教と心中する─【16】
文・島田裕巳
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進む「婦人部」の高齢化


 しかし、こうした世代もしだいに年齢を重ね、高齢化してきている。
 集団就職とのかねあいで考えるならば、それがはじまった1954年に15歳で上京してきたのであれば、彼女たちは1939年くらいの生まれになり、現在では、70代の半ばに達している。集団就職が終わる1970年代なかばになると、高校への進学率が90パーセントを越えていたから、集団就職してくるのも中卒ではなく、ほとんどが高卒だったはずである。となると、集団就職が終わる1975年に上京したのは1957年前後の生まれで、その世代でも60代になろうとしている。

 今の社会では70代の半ばでも元気な人間が多いが、宗教活動を実践するとなれば、以前のようにはいかないだろう。これが後5年、さらには10年もすれば、この世代の高齢化はさらに進み、70代以上が大半を占めるようになる。

 創価学会の場合には、他の新宗教の教団に比べて、信仰の継承ということにはかなり成功している。他の教団では、信仰が一代限りに終わってしまうことが多いが、創価学会は、いかに下の世代に信仰を伝えていくかに力を注いできた。1980年代に全国で盛んに行われた「世界平和文化祭」などは、そうした試みの一つであり、そこに参加した若い学会員たちは、マスゲームや人文字の訓練に力を入れ、それが彼らの世代に結束力を生む要因となった。

 しかし、周囲からの折伏によって信仰を獲得した親の世代と、家族の影響で信仰を受け継いだ子ども、さらには孫の世代では、信仰を求める切実さに大きな違いがあり、それは活動の面にも必然的に影響する。しかも、若い世代になると、元気なときの池田名誉会長のことを知らず、「池田先生のために」という意識は乏しい。そうなると、選挙活動に邁進するということにはなっていかないのである。

公明党の得票数が現すもの


 創価学会の場合、会員数は世帯で発表されている。それは、会員が朝晩のお勤めの際に、それに向かって題目などを唱える本尊曼陀羅が世帯を単位に授与されるからである。現在、その数は827万世帯と発表されている。

 この数字は、ここのところまったく変化していない。これは会員世帯の実数として考えることはできず、本尊曼陀羅が授与された世帯の総計と考えるべきだろう。会員を辞めても、本尊曼陀羅を返却したりはしないし、その制度がないからである。

 会員の世帯数に変化がないということは、新たな会員が増えていないことを意味する。実際、支部の集まりに行っても、新入会員として紹介されるのが赤ん坊ばかりということもある。高度経済成長時代の創価学会は、折伏によって膨大な数の会員を獲得していったのだが、それはすでに過去のことになっている。

 創価学会の会員の実数はなかなかつかみにくいが、参考になる数字を提供してくれているのが、NHK放送文化研究所編『現代の県民気質―全国県民意識調査』(NHK出版)である。これは、全国の4万人以上を対象にした調査であり、信頼度は高い。それによると、自分は創価学会の会員だと答えている人間は3.0パーセントに及んでいる。これに総人口をかけると約378万という数字が出てくる。
 ほかに、2.3パーセントという数字をあげる調査もあり、それだと約290万人という数字になる。創価学会の会員の実数は300万人前後と考えて間違いないであろう。

 NHKの全国県民意識調査は、1996年に行われたもので、すでにそれから20年の歳月が流れている。果たして現在ではどの程度の数になっているかは不明だが、もう一つ、選挙での公明党の得票数から教団の盛衰を見ていくことも可能である。
 2000年代になってからの衆議院選挙比例代表の数字を見ていくと、公明党の得票数は次のようになる(カッコ内は得票率)。

2000年 6月  776万2千(13.0%)
2003年11月  873万3千(14.8%)
2005年 9月  898万8千(13.3%)
2009年 8月  805万4千(11.5%)
2012年12月  711万6千(11.8%)
2014年12月  731万4千(13.7%)

 2005年の選挙は、公明党が自由民主党とはじめて連立政権を組んでいた時期のもので、900万票に迫っていた。

 ところが、2012年の選挙は、自由民主党と公明党が民主党が政権を奪い返したときのものであるにもかかわらず、前回に比べて公明党は90万票以上減らしている。2014年の選挙は、争点も明確でなく、戦後最低の投票率だった。それにもかかわらず、2012年の選挙よりも20万票近く得票数を増やしたことは、党勢が回復したとも言える。だが、現状において、900万票はもちろん、800万票を越えることはかなり難しくなっている。
 そこにはやはり、創価学会の集票能力が落ちていることが示されているのではないだろうか。婦人部の会員が高齢化することで、その活動力が鈍り、思うように票を集められなくなっているのである。






宗教消滅
資本主義は宗教と心中する
島田 裕巳 著



【著者】島田 裕巳(しまだ ひろみ)
現在は作家、宗教学者、東京女子大学非常勤講師、NPO法人葬送の自由をすすめる会会長。学生時代に宗教学者の柳川啓一に師事し、とくに通過儀礼(イニシエーション)の観点から宗教現象を分析することに関心をもつ。大学在学中にヤマギシ会の運動に参加し、大学院に進学した後も、緑のふるさと運動にかかわる。大学院では、コミューン運動の研究を行い、医療と宗教との関係についても関心をもつ。日本女子大学では宗教学を教える。 1953年東京生まれ。東京大学文学部宗教学宗教史学専修課程卒業、東京大学大学院人文科学研究課博士課程修了。放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員を歴任。主な著書に、『創価学会』(新潮新書)、『日本の10大新宗教』、『葬式は、要らない』、『浄土真宗はなぜ日本でいちばん多いのか』(幻冬舎新書)などがある。とくに、『葬式は、要らない』は30万部のベストセラーになる。生まれ順による相性について解説した『相性が悪い!』(新潮新書)や『プア充』(早川書房)、『0葬』(集英社)などは、大きな話題になるとともに、タイトルがそのまま流行語になった。
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